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コンサルで社会課題の解決目指せ 東大生就職数1位のコンサル代表が語る仕事の魅力と必要な資質

コンサル業の魅力を語る、いずれもEYストラテジー・アンド・コンサルティング代表取締役の吉川聡さん(左)と梅村秀和さん=東京都千代田区、2025年1月10日

 東大新聞社が発表した2023年度に卒業した東大生の就職者数上位3位は、コンサル企業3社と3位タイの商社1社が占め、1位は最多の20人が就職した大手コンサル企業のEYストラテジー・アンド・コンサルティング(東京都千代田区)だった。いずれも同社の代表取締役を務める、吉川聡さん(60)と梅村秀和さん(53)の2人に、近年のコンサル人気の背景やコンサル業の使命、魅力、将来展望などを聞いた。

 ―コンサル人気の背景は。

 吉川 コンサルはいまほどではないが、昔から人気はあった。最近の人気は、コンサル業が社会課題の解決に挑戦できることに魅力を感じる人が増えた結果ではないか。

 梅村 コンサルは若い時から、多様なクライアント(顧客企業)の課題に向き合うことができ、幅広い分野に関する知識・経験を身に付ける機会が多い。社会が複雑化する中で、自身のさまざまな可能性を試したい意欲的な若者が、幅広い活動が可能なコンサル業に目を向け始めたのではないか。

 ―近年の新卒採用人数は。

 吉川 ここ最近は300人前後。弊社の年間売り上げは955億円(24年6月期)で5年前の3倍以上に上り、新卒、中途ともに採用を強化している。弊社従業員数は4090人(1月1日時点)と5年前の倍以上になった。

 ―コンサルに必要な資質は。

 吉川 “地頭”の良さに加え、最後までやり通す力。さらに組織の壁を超えて協力するコラボレーション力を求めたい。「自分だけ良ければいい」という独善的タイプは、社会が複雑化した現在、コンサルには向かないだろう。

 梅村 コラボレーション力はとても大切だ。それが弊社の成長につながっている。もちろん一匹おおかみ的な資質にも価値がある分野があることは否定しない。言うまでもないがコンサルには、自分で考えて何らかの解(解決策など)を見つける前向きな意欲が必要なことも忘れてはいけない。

 ―入社後の歩みは。

 吉川 実力を身に付ければ、コンサルタント、マネージャー、シニアマネージャー、アソシエイトパートナー、パートナーの順でランクが上昇し給与も上がる。それぞれのランクで求められるスキル、能力の内容・水準が定められており、共通の「スキルチェックシート」で評価される。新入社員は徹底的な研修の後に人事系、技術系、戦略系などいろんな分野の仕事を一通り経験し、本人の適正と希望を参考に各ユニット(部署)に配属される。新人社員が「一人前」と評価されるコンサルになるには2、3年かかる。

「コンサルは日本の未来に影響を与えることができる仕事」と語る吉川聡さん

 ―一人前になった後は。 

 梅村 いろんな体験を積んだ上で、さらに専門性を深めていく。だいたいシニアマネージャーの段階からそれぞれの専門深化の方向性が現れてくる。

 —最近の離職率は。

 吉川 離職率は12%前後。業界内では低いと自負している。転職したわが社の仲間は、投資家やスタートアップの経営者になったり、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)など大企業のいわゆる「CxO(チーフオフィサー)体制」の責任者になったりするなど、さまざまな分野で活躍している。

 梅村 当然弊社で長くやっていただきたいが、弊社の究極的な目的は、大きな意味での社会課題の解決なので、転職して活躍する仲間は応援したい。「CxO」を目指す人が増えることは日本社会にとって良いことだ。社会で活躍する人物を世に送り出した弊社の評価も高まる。

 ―社会貢献の具体的事例を。

 吉川 自治体や観光業者らと一緒に訪日客誘致とオーバーツーリズム対策(過密化緩和策など)を調和させた取り組みで一定の成果を上げることができた。障害者雇用のルール案形成に関与する事例にも取り組んだ。

 梅村 地域経済の大きな課題である「事業承継」を実現する企業の合併・買収(M&A)を数多く手がけている。事業承継に成功すると新聞に掲載される。われわれM&A担当コンサルの励みになる。

 —コンサル業界の今後の展望は。

 吉川 チャイナリスクやウクライナ情勢、イスラエル・パレスチナ紛争などの国際情勢や自然災害がたびたび起きることなどを踏まえると、政治・経済・社会の不透明感は確実に高まっている。小規模コンサルの倒産が増加傾向にあり、弊社をはじめとした大手コンサルの責任は大きくなっている。コンサルは社会に「なくてはならない存在」である。コンサルの役割は大きくなっていくはずだ。

「コンサル業界は総合力が試される時代に突入する」と話す梅村秀和さん

 梅村 世の中がものすごい速度で変化・複雑化しており、コンサル業界は総合力が試される時代に突入する。弊社はコンサル業務とM&A業務を分けた2社体制を、20年10月から弊社1社で両業務を行う体制に移行したが、さらにタックス業務(税務業務)やアドバイザリー業務(非監査業務)も含めた、一体的サービスの提供が今後さらに求められてくるだろう。

 —コンサル志望の若者に一言。

 吉川 社会を変えたい、世の中のために役に立ちたい、というやる気のある若者がコンサル業を選択するには、いい時代かもしれない。日本の未来に影響を与えるような仕事ができる可能性がこの業界にはある。

 梅村 コンサルは実体験でいろんなことが学べる。向上心があれば、いくらでも掘り下げて学ぶ機会がある。このような経験は多くの人にとって人生のプラスになるはずだ。