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気候変動、30年後の行方は? EYJapanが予測体感イベント「EY FOUR FUTURES」

気候変動の問題について考えるイベント「EY FOUR FUTURES」の映像の一場面

 トランプ米大統領が就任演説で宣言した「米国黄金時代」の到来。「ドリル・ベイビー・ドリル(資源を掘りまくれ)」と化石燃料増産の旗振りや気候変動の国際取り決め「パリ協定」からの米の離脱行動は、就任前から想定済みとはいえ、脱炭素を巡る今後の国際世論の動向に影響を与えそうだ。

 しかし、世界の気候変動を巡る企業活動の在り方を長年研究してきた、監査・税務、コンサルティングなどを国際的に手掛ける牛島慶一・EYJapan気候変動サステナビリティサービス日本地域リーダーは「アメリカは連邦制国家。州によって気候変動への対応は全く異なる」として、トランプ米連邦政府の動向を針小棒大化しすぎると、気候変動に関わる国際潮流の本筋を見失うと警告する。

 そのEYJapanは3月18~21日、信頼できる国際機関公表の各種環境・経済データを基にEYのサステナブル専門チームがまとめた気候変動の行方に関わるベスト、ワーストの未来予測「30年後の4つの世界」を体感する関係企業向けイベント「EY FOUR FUTURES(フォーフューチャーズ)」を東京都千代田区のEY Japan本社で開いた。

 同イベントは昨年10~11月にコロンビアのカリで実施された「生物多様性条約第16回締約国会議」などでも開かれ、環境問題に取り組む関係者らが参加した。このイベントはこれまでに計16カ国で開催され、約8千人が体験した、という。

イベント会場で報道陣にイベントの趣旨を説明するEYJapanの牛島慶一氏=東京都千代田区のEYJapan本社、2025年3月17日

 このイベントの特徴は、気候変動の未来予測のイメージを「科学的データでなく視覚・聴覚を通じて参加者に立体的に訴えかける“暗闇”の体験空間」(牛島慶一氏)。人工知能(AI)を活用した最先端映像とサラウンド効果音を響かせる音響システムを構築し、30年後の日常生活の風景や動植物を含めた自然の変化などをメインの大画面と4つの縦長サイド画面、各所に配置した多数のスピーカーシステムでリアルに体感させ、「頭だけでなく心と体で気候変動の問題を理解してもらうことを目指した」(同氏)という。

 イベント時間は約45分。1回の参加定員は15人程度で、体感後に感想を語り合う「フリートーク」の時間も設けている。気候変動に関する他人の意見を聞くいい機会になっているという。

気候変動に関わる国際潮流の本筋を見よ、と述べるEYJapanの牛島慶一氏

 このイベントで示されるベストの予測は地球の平均気温が産業革命前比で1・5度上昇にとどまる世界。「世界が同時多発的な危機に立ち向かった」世界で「消費習慣が変わり持続可能性の基盤である共有資源を管理する責任を果たすべきという“グローバル・コモンズ・スチュワードシップ”が中核的な社会価値となった」世の中である。

 一方、ワースト予測は地球の平均気温が同4度上昇した世界。一種のディストピア(ユートピア・理想郷の反対の暗黒郷)で複数の重大危機が現実化し「世界は崩壊の一途をたどる」。洪水、山火事、熱波などの異常気象で何百万人の命が奪われ、サンゴ礁や熱帯林などの生態系は崩壊。これに伴い紛争や大規模移民の波が発生し、農業、医療、物流、金融、治安など世界の政治・経済・医療などのシステムが大混乱に陥って世界の多くの人々が地獄にいるような貧困生活を強いられるイメージを提示する。

 このワースト予想は、気候変動の課題に対して産官学が無策を続けた最悪の結果を描いたもので、自然災害がやまない地球環境の映像が目に、生活苦や物資不足など窮状を訴える人々の哀訴が耳に、暗闇の中で飛び込んでくる。

 「EY FOUR FUTURES」には関係企業の計約70社、約250人が参加した。大阪市内での開催も検討している。