「音と音楽」の三つの事業で未来を創る ヤマハの「Yamaha Evolve Day 2026」

「Yamaha Evolve Day 2026」に登壇した(右から)ヤマハ執行役 経営本部長 西村 淳、 同執行役員 新規事業開発部長 北瀬 聖光、同楽器事業本部 ミュージックコネクト事業推進部長 三田 祥二、ヤマハミュージックイノベーションズ社長兼CEO 杉野 祐介の各氏(肩書は登壇時)=3月19日、東京都中央区のヤマハホール

 音と音楽の力で未来を―。ヤマハ(静岡県浜松市)は3月19日、東京都内で事業の変革(Evolve)に向けた取り組みや中長期戦略について説明する投資家向けイベント「Yamaha Evolve Day 2026」を開催した。

 今回のイベントでは、注目市場である「音楽・ミュージシャン市場」と「クリエイター市場」に向け、主に「ミュージックコネクト事業」「クリエイター事業」「バーチャルエンターテインメント事業」の三つの事業について説明が行われた。

 ミュージックコネクト事業は、ヤマハが長年注力してきた楽器販売にとどまらず、顧客の体験価値を高めライフタイムバリュー(LTV)を向上させる取り組みだ。ヤマハは全国で2000以上の音楽教室(ヤマハ音楽振興会運営)を展開し、楽器演奏人口の拡大につなげているが「楽器を始めた人の90%以上が、習得が難しいなどの理由で1年以内に習うのをやめてしまう」という。

▽チャットレッスンを導入

 担当する三田祥二・ミュージックコネクト事業推進部長は、事業の柱に「オンラインレッスン」を挙げた。オンラインレッスンには、アプリなどを活用し手軽に始められる「独習型」があるが、「上達が限定的」といったデメリットがある。画面上で講師が指導する「ライブレッスン」は「効果的でモチベーションを維持できる」という利点がある一方で「敷居が高い」という課題も抱える。

「最も大事なことは音楽人口の拡大だ」と話す三田祥二・ミュージックコネクト事業推進部長

 ヤマハが展開するオンラインレッスンは、チャットレッスンとライブレッスンの2本立てだ。チャットだと、講師とレッスン時間を合わせる必要がなく、動画を撮ってチャットで質問を送ると講師から指導内容が返信されるので自分のペースで練習することができる。

 ギターなど弦楽器をはじめ、管楽器、鍵盤楽器まで、さまざまな楽器を扱う総合メーカーのヤマハには「ミュージックID」という登録会員が800万人いる強みがある。三田氏は「ヤマハは顧客との結びつきが多いので、(オンラインレッスンも)かなりの利用者が見込める」と話す。

 オンラインレッスンは、チャット型が月額6000円から、ライブが月額1万2000円からで、2026年3月から国内でスタートした。ヤマハは、世界の音楽教育に占めるオンラインレッスン市場が2024年の27%から31年には39%に拡大するとみている。三田氏は「楽器の売り切りからサービスへ」と言及。オンラインレッスンの市場拡大を背景に今後、世界展開する方針だ。

▽ワンストップソリューション

 2本目の柱は「クリエイター事業」だ。ヤマハは2025年1月、米国シリコンバレーに子会社「Yamaha Music Innovations(ヤマハミュージックイノベーションズ)」を設立。スタートアップ企業などとの共創による新規事業開発の取り組みを始めた。具体的にはコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を立ち上げ、シリコンバレーで強いネットワークを持つ投資家を迎え、投資活動を本格化。音楽領域のスタートアップ支援を加速させている。

 この日の発表会のために来日したというヤマハミュージックイノベーションズの杉野祐介社長兼CEO(最高経営責任者)は、CVC立ち上げから2年でスタートアップ企業と12件の協業を実現したと明かした。協業の先に見据えるのはクリエイターへのアプローチだ。ヤマハがプラットフォーマーとなって、多彩なビジネスパートナーと連携しビジネスチャンスを広げる。

杉野祐介・ヤマハミュージックイノベーションズ社長。「ヤマハのプラットフォーマービジネスを成功させたい」

 杉野氏は「クリエイターはミュージシャンだけではない」と話す。ゲームや動画など音楽以外の分野にも広げ、楽曲・音声コンテンツの制作・編集・配信から、ジャケット写真などのグラフィック生成、プロモーション動画制作、グッズ制作・販売までヤマハを介して「今までいろいろあってばらばらだった」(杉野氏)というサービスをワンストップでクリエイターたちがやりたいことの実現を手助けする。

 ヤマハはクリエイター向けの新たな統合型プラットフォーム「Yamaha Creator Pass」(ヤマハ・クリエイター・パス)の提供を始めており、2026年に2.2兆円と見込むクリエイタービジネス市場が2032年に5.2兆円と推計する巨大マーケットに挑む。

▽ボカロ文化を世界に

もう一つの柱は、市場規模が拡大している「バーチャルエンターテインメント事業」。バーチャルキャラクターによるライブや、ヤマハが開発した音声技術「VOCALOID(ボーカロイド)」を使った楽曲「ボカロ曲」の人気が高いことから「ボカロ文化を世界に広げる」ことでビジネスを拡大する戦略だ。

北瀬聖光・新規事業開発部長。「ヤマハの強みを生かして成長領域に進出する」

 ヤマハ執行役員(登壇時)の北瀬聖光・新規事業開発部長は、新規事業による成長について「自前主義からの脱却がカギだ」と強調する。CVCを活用した投資や、外部の技術などを取り入れる「オープンイノベーション」、M&A(企業の合併・買収)を積極的に進めることで実現したいという。

 総合楽器メーカーのヤマハは、新たなビジネス領域に入ったといえるだろう。