「6月5日」は、1972年の同日に「国連人間環境会議」がストックホルムで開かれたことを記念し、環境省(現)が定めた「環境の日」。各企業が環境の日に向けたサステナビリティーな取り組みを展開する中、食品メーカーのJ-オイルミルズ(東京)は、定期的に動物性の食生活を植物性に切り替えて、体にも環境にもサステナブルな食生活を目指す「食べるサス活」プロジェクトを始動した。
6月5日(月)に東京都内で開催された同プロジェクトの発表会。J-オイルミルズ 専務執行役員の大髙寛氏が、同プロジェクトについて説明した。同社も加盟する「Plant Based Lifestyle Lab(P-Lab)」(東京)がプラントベースフードについて昨年、15~79歳の約2万人を対象に調査を実施。プラントベースフードの認知度は40%、食べたことがあるという人は11%にとどまった。一方、食べたことがある人からは「ダイエットができた」「便通が良くなった」「健康診断の結果が良くなった」など、健康への良い影響を感じている人が少なくないことも分かったという。
J-オイルミルズ社は、オランダのアップフィールド社とともに、プラントベースチーズとバターのブランド「Violife(ビオライフ)」シリーズを展開。同チーズはココナッツオイルを主原料とし、乳やナッツ不使用。国が定めたアレルギー物質(特定原材料等)28品目も使用せず、ビーガンやベジタリアンだけでなく食物アレルギーを持つ人にも好評だという。大髙氏によると、ビオライフの植物由来チーズ4製品は、生産から廃棄までのライフサイクルにおけるCO2排出量が、国内で販売されている乳製品のチーズの30%以下に、土地占有面積も25%以下に抑えられていることが分かったという。製品の主原料にココナッツオイルなどの植物を使用しており、乳牛を生育する工程が不要であることが要因という。大髙氏は、「植物性食品を身近に感じて積極的に取り入れてもらうために、今後も情報発信に力を入れていく」とした。
腸内環境の専門家で京都府立医科大学大学院医学研究科の内藤裕二教授と、漢方薬処方を中心とした内科診察を行う東京・江東区のイシハラクリニック副院長・石原新菜氏による“植物性”食品の体へのメリットの解説も。
内藤教授は、昨年の厚生労働省発表で日本人の平均寿命は女性が87.57歳(世界1位)、男性が81.47歳(世界3位)だったことを挙げながら、健康に関するさまざまな課題も分かっていていると問題提起。「食事の影響や運動不足、腸内細菌の変化や環境要因などにより腸が老化すると、腸の局所で生じた慢性炎症が多臓器への影響につながるのではないかと考えている」と述べた。昔ながらの日本食の見直し、全粒穀類など食物繊維の摂取、取り過ぎると腸内環境に悪影響を及ぼす肉・砂糖・塩を食べ過ぎないなどの注意点を挙げ、「植物性製品を利用するのも1つの方法。人にも地球にもヘルシーな食生活を考えていく必要性がある」と話した。
石原氏は「栄養過剰な栄養失調の現代人に必要な『食べるサス活』」と題して講演。普段の診療において、生活習慣病が若年化し、20~30代に増えているのを感じるという。また、1日3食の内容が昔と大きく変わり、良質のたんぱく質・ビタミン・ミネラル・食物繊維を含む昔ながらの献立から、糖質・脂質過多な“血液をドロドロにする食事”になっていると指摘。「たんぱく質を何で取るかを考え、プラントベースフードを取り入れることで、今までのような食生活を楽しみながら、動物性に偏った食生活を植物性にシフトさせましょう」と呼び掛けた。
低糖質スイーツの第一人者であるパティスリー「モンサンクレール」(東京・自由が丘)の辻口博啓シェフと、世界中のビーガンやベジタリアンから高い評価を得ているビーガンレストラン「菜道」の楠本勝三シェフ、そして、日頃から積極的に植物性由来の食品を摂取しているモデル・タレントの藤井サチさんによるトークセッションも展開。
辻口氏は、「楠本氏のお店で食べた翌日、めちゃくちゃ胃腸がすっきりしていた。今までの食事が胃腸に負担をかけていたことを知った。実体験として、プラントベースの食べ物が体に負荷をかけにくいことを感じた。CO2削減の問題も含め、プラントベースフードの活用に取り組んでいきたい」と話した。楠本氏は、「植物性由来のものだけだと味が物足りないんじゃないかというイメージを持つ方もいると思うが、これだけおいしいものができるんですよということを、料理の提供を通じて伝えていきたい。環境への負荷が低い食事を身近に感じてもらえれば」と話した。
辻口シェフと楠本シェフが考案した乳製品不使用の「『Violife』食べるサス活プレート」が紹介され、「レジェルテ(プチガトー)」「クリーミィビオサンド」「プラントベースWチーズクッキー」「プラントベースチーズカツカレー」の試食も行われた。楠本シェフは「プラントベースチーズカツカレー」について、カレーのソースにプラントベースのモッツァレラチーズのシュレッドタイプを溶かし込んでコクを出したり、野菜だけで作ったカツの中にチェダーチーズのスライスタイプを挟んでボリューム感を出したりしたことなどを説明した。辻口シェフは「レジェルテ(プチガトー)」について、コーヒーを生かしながら、カカオ・バナナ・パッションフルーツのクリームを入れ、植物性のバターやチーズをうまく使いながらなめらかな食感と濃厚な味わいを実現していると解説した。
藤井さんは「私たちの世代は特に環境問題への意識が高い。自分は、長く愛せる服を選んだり、食べ物も自分の体調のために植物由来のものを選んだりすることが多い。それが環境のためにもなるということに、お得感を感じます」と話した。さらに、「植物由来のものをたくさん食べていると寝覚めが本当によく、体が軽い。肌荒れも減ったような気がします」と自身が感じる体への影響を紹介。食生活について「サプリではなく食事から栄養を取る、ルールを厳しくし過ぎない、おばあちゃんになっても続けられる食生活を目指している。楽しくおいしく食べることを大切にしている」などと話した。
・辻口シェフの「レジェルテ(プチガトー)」は、「モンサンクレール」にて6月5日(月)から、楠本シェフの「プラントベースチーズカツカレー」は、「菜道」にて6月12日(月)から販売予定。 ・辻口シェフの「クリーミィビオサンド」は「ル ショコラ ドゥ アッシュ」で、「プラントベースWチーズクッキー」は「和楽紅屋」で販売を予定しており、販売開始については公式インスタグラムなどで発表される。