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深刻化するコメ農家のイネカメムシ被害を支援 防除DXアプリ「TENRYO」が「コメ」のAI病害虫予測に新対応

  「農家の経営リスクを最小化する」をミッションとする「ミライ菜園」(名古屋市)は、AI病害虫予測による防除DXアプリ「TENRYO(テンリョウ)」に、新たにコメ(水稲)の病害虫予測機能を追加した。コメの価格高騰の一因にもなっているイネカメムシをはじめとする水稲病害虫の予防的防除を支援していく。また、これまでJAや農業法人向けに提供してきた同サービスを、個人農家向けにも展開していく。

 同社によると、夏場の高温とともにコメの価格が高騰する要因の一つとなっているのがカメムシ被害。中でも、イネカメムシは今年も大量発生が全国的に懸念されており、埼玉県では2025年の越冬個体数が前年比43倍に膨らむなど、各地で深刻な状況が報告されているという新聞報道もあるという。イネカメムシは、稲穂の汁を吸うことで不稔(実らない状態)や斑点米を引き起こし、収量と品質の両面で深刻な被害をもたらす。他の斑点米カメムシ類と異なり、出穂直前まで越冬場所(林縁の落葉下等)から離脱しないため、事前の発生予測が難しく、防除が困難な害虫と言われているという。一部地域では薬剤耐性なども報告されており、適切なタイミングでの防除が課題となっている。

 防除DXアプリ「TENRYO」は、AIが病害虫の発生を予測し、適切な農薬散布タイミングを知らせる。これまで、キャベツ・ブロッコリー・タマネギといった野菜のほか、かんきつ類など9種に対応してきた。近年の異常気象により、ベテラン農家でも防除タイミングの判断が困難なケースが増える中、独自のAIがイレギュラーな気象条件下でも的確な防除タイミングを予測。愛知県豊橋市での実証実験では、冬場のイレギュラーな高気温による病害も正確に予測し、利用者は臨時の防除につなげることに成功、前年比4~15%の収量増を達成したという。

 今回、主にかんきつ類のカメムシ予測で培った高精度なAI技術を水稲にも応用。気象データと過去の発生履歴を分析し、イネカメムシをはじめとする水稲病害虫の発生リスクを6日先まで予測する。これにより、最適な防除タイミングを逃さず、被害を未然に防ぐことが可能になる。名古屋地区周辺のイネカメムシ予測では、AIのアルゴリズムが、6月28日から7月上旬にかけて発生リスクの急上昇を検知。即日アプリユーザーへ警戒や防除を促す「プッシュ通知」を発信した。その後7月16日には、7月上旬の捕獲調査結果をもとにした愛知県の「注意報」が発出された。報告によると、イネカメムシを含む斑点米カメムシ類の発生数が7月上旬としては過去10年で2番目に多くなっており、同アプリのプッシュ通知のタイミングと一致。AI予報により、的確なタイミングで早期にユーザーへの注意喚起ができたという。

 これまでJAや農業法人向けに提供してきたTENRYOを、個人農家でも利用できる「TENRYO(個人農家版)」として7月からリリース。月額990円(税込み)のサブスクリプション方式で、App StoreGoogle Playからダウンロードできる。また、この個人農家向け「TENRYO」は、登録した圃場の病害虫の発生状況を月5回報告することで、利用料が無料になる仕組みを導入。ユーザーから集まった発生履歴を地域の「病害虫発生マップ」として活用し、各地域のJAや自治体と連携した新たな防除コンソーシアムとして生かしていくという。今回の個人農家版のリリースにより、規模を問わず全国の生産者がAI技術を活用した防除を実践できる環境を整備し、日本の生産者の所得向上に貢献していきたいとしている。