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離島の未来を考える「未来のシマ共創会議」 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」

 日本には1万4125の島があり、本州、北海道、四国、九州、沖縄本島の5島を除く1万4120が離島と定義される。そのうち有人離島は417島(国土交通省)。400を超える離島それぞれに島(アイランド)固有の自然環境や風土・文化があり、そこにシマの暮らしがある。

 豊かで多様な島々の暮らしや生業(なりわい)をいかに次世代へ継承するか。離島経済新聞社(リトケイ)主催の「未来のシマ共創会議2025」が10月8~9日の2日間にわたり開催された。第2回となる今回は、国土交通省主催「スマートアイランドEXPO」との合同開催で規模を拡大し、「意志ある未来をシマから創(つく)る」をテーマに掲げた。

 共創会議は、行政、事業者、研究者、NPO、学生など多様な立場の参加者が「シマ思考」を手がかりに語り合う場として企画された。「シマ思考」とは、自然との共生や共同体的な支え合いなど、島国日本、そして離島に今も根づく暮らしの価値観を現代社会に再生させる視点である。

 当日はオンラインを含め約1200人が参加し、全国の離島や沿岸地域から人々が集結。人口減少や気候変動、交通・医療の縮小といった共通課題を見据え、地域の知恵と技術、人の力を結び直す試みが活発に語られた。

 プログラムは、現場の実践者などによるトークセッション、参加型ワークショップ、地域の新しい挑戦を紹介する展示・交流エリアなど多彩な構成。離島を舞台にしたスタートアップや地域づくりの構想を発表し、企業・行政との連携を呼びかける「共創ピッチ」、離島食材を味わえる懇親会など、参加者同士の交流を深めるユニークな企画もあった。ウェブサイトでは開催前からプレイベントや動画配信を行い、一過性にせず、議論と関係を積み重ねている。

 リトケイは離島情報を発信するメディアとして15年、全国約400島の現場とつながってきた。この共創会議は、情報発信にとどまらず、島の未来を共に考え、行動を生み出す〝プラットフォーム〟へと発展している。

 離島では、台風などで船が来なければ店の棚から商品が消えるのは日常だ。家庭での備蓄や近隣の支え合いが当たり前にあるシマの暮らしの中で、日常のつながりの維持と、それを支える生業の形が模索されている。航路維持や医療提供など、政策として対応すべき課題も多いが、若い世代を中心に、シマ相互に連携しながら、産業創出や経済・文化交流を図るなど、〝愛〟のある関係人口づくりに取り組む動きも活発だ。

 112223日には、国土交通省/日本離島センター主催の交流イベント「アイランダー2025」も東京・池袋で開催される。リトケイも出展予定で、島国日本の多様性を感じる催しが続く。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.42からの転載】