今月、自治体初の「メタバース課」の発足が話題となった鳥取県。遠いようで実は近い鳥取県は、東京(羽田)から空路で約1時間20分。また鳥取から急行で30分ほどの県中央部の倉吉市は人気の観光スポットが点在するエリア。この倉吉市に2025年、鳥取県初の県立美術館がオープン(建設予定地:鳥取県倉吉市駄経寺町2-3-12外)する。
2月8日、鳥取県立美術館パートナーズと鳥取県教育委員会は、県立美術館の進捗共有と意見交換などを目的に報道関係者を対象にした「鳥取県立美術館第1回メディア懇談会」を東京都内で開催した。
メディア懇談会に登壇した鳥取県教育委員会・梅田雅彦美術館整備局長は、建設中の県立美術館について「全国で“ほぼ”最後(自治体運営で)の美術館となりますが、美術に関する大きな革命を県民にもたらそうと努力しています」とあいさつ。
鳥取県立美術館の特徴は、若手作家の活躍の機会の創出や地域連携しながら、観光拠点としてアートの力でまちづくりに貢献する県民参加型の美術館。また、美術館の整備運営手法は、県内
企業を含む10社で構成する鳥取県立美術館パートナーズ株式会社(特別目的会社:SPC)が設計・建設・維持管理などを担う。また、事業手法は、PFI(BTO方式)と呼ばれる全国初の取り組みで、民間事業者のSPCが施設を建設した後に、所有権を公共に移転し、SPCが維持・管理を行うという。
倉吉パークスクエアの一角に建設中の美術館は、大御堂廃寺跡の広大な空間に隣接する3階建て三層吹き抜けの構造。県産木材を使用した「ひろま」を中心に1階は、キッズルームやワークショップルームのほか、県民の創作活動を発表の場である県民ギャラリーなどをレイアウトしている。また2階は、洋画、日本画、版画などを展示する5つの常設展示室を配置。展望テラスを配置した3階には、企画展示室を設け、企画展や重要文化財などの展示も行うという。
また展示物は、これまで鳥取県立博物館が収集してきた鳥取県にゆかりのある美術コレクション約1万点のほか、今後は収集の方針を拡大して、国内外の優れた美術品を収集して展示するという。しかし、収集の方針を拡大したことから、昨年はアンディー・ウォーホルの美術品「ブリロの箱」の購入で県民の理解での賛否が分かれたという。これについて学芸担当の尾崎信一郎氏は「新しい収集方針のうち重要な作品だと考えて購入したが、なぜブリロなのかという唐突感があった」と反省の弁を述べた上で「もう一度、この作品の説明を丁寧にしていきたい」と説明した。
また、開館初年度には、「国内外の名品によるテーマ展」「300年にわたる日本の近世美術の豊かな成果」「県立美術館コレクション展(県立博物館での企画展)」「鳥取が生んだ、まんがの巨匠」「『コネクション』をキーワードとした本格的な現代美術展」を予定しているという。
県民参加型をうたう同美術館では、これまでに意見交換会を53回開催し、建設見学会には3000人が参加した。今後は、県内小学生を対象にバス招待事業「ミュージアム・スタートバス」、対話型ファシリテーター(案内役)育成講座、ワークショップ、アート・ラーニング・ラボ(アートを通じた学び)などを開催し、県民に受け入れられる施設を目指すという。