カルチャー

“脱LDK”を掲げ新しいキッチンの在り方を探る クリナップ「未来キッチンプロジェクト」始動

“未来キッチン”のビジョンについて語るクリナップの藤原亨常務(左)と武蔵野美術大学・山﨑和彦教授
“未来キッチン”のビジョンについて語るクリナップの藤原亨常務(左)と武蔵野美術大学・山﨑和彦教授

 “脱LDK”! 「キッチン」の本来の目的である“調理の場”から、人々が集い、非常時にはライフライン支援にもつながるツールへ――。そんなキッチンの新しい在り方を目指すクリナップ(東京)の「未来キッチンプロジェクト」が始動した。日本で初めて「システムキッチン」を発表し今年50周年を迎える同社が、武蔵野美術大学(東京都小平市)との産学共同で、既存の「システムキッチン」の概念にとどまらない新しい発想で、キッチンの未来を切り開いていく取り組みだ。

実証実験イメージ
実証実験イメージ

 「未来キッチンプロジェクト」では、3つの活動を推進する。
 1つ目は、武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科の山﨑和彦教授、学生たちと共に、産学共同で未来のキッチンを考える「未来キッチンラボ」の創設。「より気軽に集えるキッチン」「屋内から外に飛び出すキッチン」という視点の下、地域社会の中でコミュニケーションの場となり、非常時には助け合いもできるキッチンの試作品製作や実証実験に取り組んでいる。昨年11月に千葉県館山市で実施した社会実験では、自動車メーカー関連企業の協力も得て、試作のキッチンを車で運び、調理を実施。循環ろ過装置による水の使用や、車からの電源供給などを自治体の人たちと検証し、実用化に向けた課題を整理している。

 2つ目は、「リサイクルプログラム」の開始。同社は、買い替え時にリサイクルできるステンレス製のキッチンの普及に努めてきた。クリナップを採用している工務店・リフォーム店・燃料店による会員組織「水まわり工房」と協力し、より確実にリサイクルが促進される仕組み作りを進めていく。

 3つ目は、未来を担う子どもたちと一緒にこれからのキッチンを考える「未来キッチンイラストコンテスト」の開催。全国の小学生を対象に、“あったらいいな”と思う未来のキッチンをイラストで自由に表現し、イラストの解説文と合わせて募集する。WEB上と全国の小学校へのポスター・応募要項の送付で告知をし、6月1日~10月15日の期間に募集、12月に結果発表の予定。

クリナップ「未来キッチン イラストコンテスト」
クリナップ「未来キッチン イラストコンテスト」

 2月22日に、「未来キッチンプロジェクト」発表会が東京都内で行われた。“未来キッチン”構想のキャッチフレーズは、「いつものときも、もしものときも。」。クリナップの藤原亨・常務執行役員・開発担当は、「社会の笑顔」「家族の笑顔」「個人の笑顔」を支えるクリナップの未来のキッチン構想について、社会の危機への対応・ライフスタイルの変化への対応・新たな「場」作りなどをポイントに説明した。山﨑教授は、パンデミック、自然災害など大きな環境変化への対応が求められる今日において、「企業においても“ビジネスシフト”がいわれ、社会の中で自分が何をできるかを考えていくことが求められている」と指摘。「自社だけが良ければいいのではなく、どれだけ社会の未来に貢献していけるのかが、これからのビジネスにつながっていく」などと話した。

 また、「未来キッチンプロジェクト」リーダーの竹内宏・クリナップ代表取締役・社長執行役員から、DIYタレントとしても活躍し、同プロジェクト応援リーダーに就任したモデルの森泉さんに、“名刺”が渡された。

クリナップの竹内宏社長から森泉さんへ応援リーダーの“名刺”を贈呈
クリナップの竹内宏社長から森泉さんへ応援リーダーの“名刺”を贈呈

 森さんは、「私自身、家族のためにキッチンで過ごす時間が長いけれど、キッチンがより居心地の良い場になれば嬉しい。キッチンが今後どのように進化していくかということを楽しく伝えていきたい」と語った。また、森さんが思い描く「未来キッチン」として、棚や天井から出てきた野菜が、好みの形や大きさにカットされて出てくる“新鮮な野菜が食べられる畑とつながったキッチン”もイラストで紹介された。

森泉さんの考える“未来キッチン”を発表
森泉さんの考える“未来キッチン”を発表

 「台所は女性の城」「男子厨房に入るべからず」などの言葉が存在した時代もあった。現在もなお、キッチンは、一家の料理の担い手が長い時間を過ごすスペースかもしれない。「家族が社会と関わる中で、家族の笑顔が増え、活躍の場が広がっていく」と山﨑教授。そのツールとしての「キッチン」の、無限の可能性を探るプロジェクトが始まった。