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世田谷区民の兵営生活を日記をもとに紹介 区立平和資料館で企画展

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 戦争の歴史をたどる時、後世のわれわれの目に触れるのはいわゆる“主要な”人々の動きや戦果が多い。でも本当は歴史書に書かれていない、庶民が経験した戦争の総体の方がはるかに大きな歴史の柱だ。昭和女子大学(東京)の「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」は、4月30日まで、世田谷区立平和資料館(東京)で「世田谷区民が送った兵営生活 -栗林一路を例に-」展を開催している。中学生の時に太平洋戦争開戦を経験し、学徒出陣した栗林一路さん(1924~2013)から寄贈された日記を題材に、戦時期の生活の再現と、「戦争と人間の関係」について学生が研究した成果を発表している。

 栗林さんは当時の中学部から青山学院に入り、専門部へ進学するも学業途中で学徒出陣。イラストもふんだんにユーモアたっぷりにつづられた日記は、戦時期の青春を生き生きと伝えてくれている。この史料の価値を社会に向けて発信しようと、学生たちが日記の記述から発信すべきメッセージを絞り込み、複数の記述を組み合わせて栗林一路さんの人物像を固めていく、という学問的プロセスに取り組んだ。

 研究を進めるにつれ、日記は戦時の生活を知るうえで貴重であるのみならず、いったん始まった戦争が、いかに一人の人間の考え方や生き方を一方へ押し流していくか、その姿を示す絶好の史料でもあるということが明らかになったという。入館料は無料。