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“永遠平和”をテーマに公募、269人の詩人・歌人・俳人による希望の書 『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』

 短詩型文学・評論・小説などを専門とする文芸出版社「コールサック」(東京)から、『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集―報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福」へ』が、1945年の第二次世界大戦末期、広島に原爆が投下された日である8月6日に刊行される。

 同社は、2007年に刊行した『原爆詩一八一人集』(日本語版・英語版)以降、毎年1冊、社会的なテーマを掲げてアンソロジー詩歌集を刊行している。『原爆詩一八一人集』英語版は、広島平和記念資料館(広島市)のミュージアムショップでロングセラーとなっており、新型コロナ禍後、特に外国人来館者を中心に購入され、今夏、第二版増刷となった。今回の新刊は、『原爆詩一八一人集』の考え方をさらに推し進め、イマヌエル・カントの「永遠平和」・宮沢賢治の「ほんとうの幸福」という理念で、詩・短歌・俳句を交えた詩歌を公募。全国各地の作家から作品が寄せられ、物故者を含めて、最終的に269人の作品を収録。現在進行中のアフガニスタン・ウクライナ・ガザなど世界の戦争地域に関する詩歌も併せて収録している。

 同書のカバー装画には、戦中・敗戦直後の日本の3地点(広島・長崎・沖縄)を現代の読者と共有するために、「原爆投下後の広島」(1945年、MeijiShowaアフロ提供)、「焼き場に立つ少年」(1945年、ジョー・オダネル氏撮影、坂井貴美子氏提供)、「白旗の少女」(1945年、沖縄県公文書館所蔵)の3点の写真を使用している。A5判・ソフトカバー・384ページ、税込み2200円。全国の書店で販売するほか、コールサック社公式ホームページ、インターネット書店で注文できる。

 収録した短歌には、「くろぐろと水満ち水にうち合へる死者満ちてわがとこしへの川(竹山広)」「太き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり(正田篠枝)」など、俳句には「水をのみ死にゆく少女蝉の声(原民喜)」「なにもかもなくした手に四まいの爆死証明(松尾あつゆき)」など、重く暗い生の言葉が並ぶ。企画編集を担当した鈴木比佐雄氏は、「広島・長崎・沖縄・世界の戦場の経験からくみ上げられた言葉には、後世の人々に伝える極限的な知恵が宿っていると考えています。“永遠平和”をテーマにした当詩歌集は、被爆者や戦禍に遭遇した人々の声にならない無言の思いや叫び声の代弁、そして核兵器や大量破壊兵器の廃棄を現実的に進める試みを、詩人・俳人・歌人たちが言葉を通して表現しようとしました」とのコメントを寄せている。同書の英語版の刊行を、2025年春ごろに予定している。