カルチャー

黒は色彩の女王 アートにおける“黒”の秘密を解き明かす

 シンプルだけれどとても印象の強い色、黒。モノでも服でも、黒があると引き締まる。アートの世界でも黒は“色彩の女王”だ。時代を超えて私たちを引きつける色「黒」についての本、『色の物語 黒』(ヘイリー・エドワーズ=デュジャルダン著、翔泳社)が発売された。ラスコーの壁画からピエール・スーラージュまで名だたる美術作品とともにたどる一冊だ。

 

 夜の闇を連想させ、神秘性と不穏さを合わせもつ色。黒は光の波長を吸収するため、物理学の観点からは「色の欠如」——複雑で矛盾した存在だ。宗教改革による禁欲主義がこの色を権威やファッションの象徴にし、作家たちは神聖さと官能性、暴力性と安らぎ、無限と虚無、人間のもつあらゆる欲望や感情を黒を使って描いてきた。

 この本では、黒を用いた著名な美術作品を多数紹介しながら、普遍的で感情に働きかける黒と秀逸なアート作品との関係を、気鋭のフランス人美術史研究家が解説している。レンブラントやホイッスラー、マネらが描いた黒衣の女性から、ピカソのゲルニカ、ポロックやマン・レイ、キース・ヘリングらの現代アート、さらに中国の山水画や古代メキシコの仮面など、さまざまな黒を用いた作品を収録。著名な美術作品とともに、強烈な魅力を秘めた黒の秘密を解き明かす。税込み3300円。