おでかけ

京都の旅が50倍楽しくなる 直木賞作家の歴史エッセイ「京都の歩き方」

 旅する前に読むガイドブックはいろいろあるけれど、どんな視点で書かれたかによって、導かれる旅も違ってくる。京都に生まれ育ち、かつて同志社大学大学院で歴史研究者を志した直木賞作家が意外な史実と逸話をつづった『京都の歩き方 歴史小説家50の視点』(澤田瞳子著、新潮社、税込み1760円)が発売された。

 千年の都にして今や145万人が暮らす政令指定都市でもある京都には、古代から現代まで、あらゆる時代の痕跡が息づいている。そんな歴史的地層を誰もが知るテーマで掘り進め、読みやすく提示することで、京都という街の解像度を上げ、今見えている景色の裏にある時の流れまで感じられるようにした一冊。

 紫式部はイワシを食べたか? 八ッ橋「夕子」とは誰なのか? 名筆に会う看板散歩のすすめ、など、著者がふだんママチャリで駆け回っている京都の街中で見つけた「歴史のしっぽ」や、日常のニュースから意外な歴史秘話をたぐり寄せてつづっている。

澤田瞳子(さわだ・とうこ)1977年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、同大学院博士前期課程修了。奈良仏教史を専門に研究したのち、2010年に長編作品『孤鷹の天』でデビュー。同作で中山義秀文学賞、2021年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。