カルチャー

千葉・流山市の注目スポット「流山市白みりんミュージアム」 “白みりん発祥の地”のレトロで新しい魅力を発信

 

 江戸川沿いに位置し、かつてその水運により醸造業で栄えた千葉県流山市。料理に欠かせない“白みりん”発祥の地として知られ、街中を歩けば、レトロな建造物を生かした趣ある店舗が点在している。今年春、「流山市白みりんミュージアム」がオープンし、その歴史や文化に、あらためて注目が集まっている。

 澄んだ色と上品な甘さが特徴の「白みりん」。酒造りで培った技術を生かし、1814(文化11)年に二代目堀切紋次郎が「万上」、五代目秋元三左衛門が「天晴」を開発したことが始まりとされる。その発祥の地で、みりんの魅力を体感できるのが「流山市白みりんミュージアム」。入り口では切り絵行灯(あんどん)が出迎え、メインの展示エリアでは、資料の展示に加え、実際に触れたり香りを感じたりと五感を刺激する演出や、バーチャル工場見学などを通して、白みりんの歴史や製造工程を楽しく学べる。巨大な仕込みおけでの櫂入れ体験では、しっかりとした重みを感じ、職人の技と苦労を実感できる。

 施設内のキッチンスタジオ「かもしアエール」では、白みりんを使った料理教室やワークショップを開催している。お土産にぴったりの、伝統の「万上流山白味醂」や、みりん粕を活用したミュージアム限定のお菓子「こぼれ梅CRUNCH」も。白みりんが20%も配合されたこだわりの「白みりんソフトクリーム」は、濃厚ながらもしつこさのない上品な甘さが特徴。

 市内にはほかにも、みりん尽くしのメニューを味わえる「古舎(ふるや)カフェ灯環(とわ)」や、大正時代にみりんを運んだレトロな「流鉄流山線」、江戸時代後期に創業した「安田屋酒店」の倉庫を活用し、2023年に誕生したクラフトビール醸造所「流山麦酒YASUDAYA BREWERY」などの見所も。古民家を活用した雑貨と自家製酵母パンの店「あかり館@雑貨Konocono」は、知る人ぞ知る人気店。

 そして、日が落ちると、流山本町の街並みを「切り絵行灯」の明かりが優しく照らす。同町在住の切り絵作家がボランティアで、家や店舗ごとの歴史や商い、住人の思いなどが繊細な切り絵で表現したのがはじまりで、同じものは一つとして存在しない。現在は多くの家庭の玄関先に飾られ、街全体をあたたかな光で包み込む。

 流山駅に隣接する元タクシー車庫を改装した「machimin」は、市民が主役の参加型まちづくりコミュニティースペース兼観光案内所。入場無料で、プロジェクトから生まれた商品を購入したり、マルシェやイベントに参加したりと気軽に立ち寄れる。Machiminを運営するWaCreation代表の手塚純子さんは、都内での会社員時代、結婚を機に子育てを考え流山市へ移住したという。みりんの魅力を発信するプロジェクト「本みりん研究所」では「流山みりん生キャラメル」などの商品化に取り組み、みりんの新たな可能性を探求している。「みりん関連にとどまらず、流山本町の魅力をどんどんプロジェクトや商品にしていきたい」と手塚さん。また、流鉄流山線の沿線に住む人たちの生活や記憶を取材した本の出版に向けても取り組んでいる。「沿線の魅力を掘り起こして発信することで新たな仲間を増やし、“電車に乗る理由”になるようなスポットが増え、“沿線”全体の活性化につながっていく、そんな展開を思い描きワクワクしています」と話している。