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「越前鳥の子紙」がユネスコ無形文化遺産に追加登録 “日本一の和紙産地”越前和紙、10年越しの悲願達成

 福井県越前市の伝統工芸「越前和紙」を代表する高級手漉(す)き和紙「越前鳥の子紙(えちぜんとりのこし)」が、2025年12月11日(令和7年)に開催されたユネスコ政府間委員会で、無形文化遺産「和紙:日本の手漉和紙技術」への追加登録を果たした。産地の職人たちが10年にわたり取り組んできた技術継承と原料栽培の努力が、国際的に評価された。

 越前鳥の子紙は、奈良時代から漉(す)かれてきた「雁皮紙(がんぴし)」の一種。雁皮特有の淡い黄味、滑らかな光沢、虫害に強い耐久性を備え、古くは経典や貴重書、かな料紙に用いられてきた。「鳥の子」という名は、卵の殻の色に似ていることに由来する。繊維が短い雁皮を均一に漉き上げるには高度な技術が必要で、現在も手漉きできる職人は限られている。

 2014年(平成26年)、ユネスコ無形文化遺産に「和紙:日本の手漉和紙技術」が登録された際、対象となったのは石州半紙(島根県)・本美濃紙(岐阜県)・細川紙(埼玉県)の3つ。日本最大の和紙産地である越前和紙は、技術保存団体が存在しなかったことから登録外となった。

 この事実を受け、越前和紙職人の栁瀨晴夫(やなせ・はるお)さんが2015年(平成27年)に「越前生漉鳥の子紙保存会」を設立。わずかな手漉き職人を中心に、準会員や研修生へ技術を伝承する体制を整えた。さらに、原料となる雁皮の確保が難しくなる中、保存会は山林への植樹・管理にも着手。技術と原料の両面で持続可能な仕組みづくりを進めてきた。

 そして、10年に及ぶ取り組みが実を結び、今回の追加登録へとつながった。栁瀨会長は「技術を次世代に確実に伝え、育てていきたい」と未来への思いを語っている。

 ユネスコ登録を受け、越前和紙の産地では観光振興への期待も高まる。2025年11月には、エリア初の工芸宿「SUKU(スク)」がオープン。客室名は和紙の原料にちなみ「楮」(こうぞ)「三椏」(みつまた)「雁皮」の3室。内装や照明、クッションに至るまで越前和紙が使われ、フロントでは簡単な和紙づくり体験もできる。宿の案内役を務めるのは地域おこし協力隊の橋口美和さん。訪れた人と産地の工房をつなぐ“和紙のコンシェルジュ”として活動している。

 今回の追加登録が実現したことにより、観光と文化の両面で、越前和紙の新たな展開が注目される。