11年ぶりに日本球界に復帰する前田健太選手と、ポップなデザインで支持を集める子ども服メーカー・マーキーズ(堺市)がタッグを組んだオリジナルTシャツが、3月27日に発売される。これまでプロ野球球団とのコラボ実績を有する同社だが、選手個人とのタイアップは今回が初の試みだ。その舞台裏には、一人の元球児としてのひらめきと、未来を担う子どもたちへの社会貢献の思いがあった。

▼「マエケン画伯」の絵を子ども服に
企画のきっかけは、前田選手の日本球界復帰の知らせだった。「復帰を心待ちにしていたファンの方々に、何か喜んでもらえる企画を届けたい」。そう考えを巡らせていたマーキーズの廣畑哲平専務の頭に浮かんだのが、前田選手の代名詞でもある、独特なタッチのイラストだった。
前田選手が描くイラストは、ファンの間で「画伯」と称され、見る者を思わず「クスッ」と笑わせてしまう愛嬌がある。「あの味のあるイラストは、絶対に子ども服と相性がいい」。大学まで野球に打ち込んでいた廣畑専務にとって、それは確信に近い直感だった。前田選手からも、「子ども服は今まで手掛けたことがないけれど、ぜひやってみたい」と返答があり、コラボが実現した。
前田選手が描き下ろしたイラストにマーキーズ側が配色やレイアウトを施し、イラストが持つ本来の質感を生かしながら、ブランドの感性を融合させていった。完成したデザインは全5種だ。前田選手の愛犬であるトイプードルの「小太郎」とマーキーズの看板キャラクターであるネコが共演し、「あなたはどっちが好き?」と問いかけるデザイン。さらには、前田選手のお子さんがマーキーズのロゴでもある馬に乗ってパパとキャッチボールをしているほほ笑ましい光景や、おなじみの「マエケン体操」をマーキーズの人気キャラクターであるパンダが再現したものなど、親しみやすい仕上がりだ。
前田選手自身も、この出来栄えに満足している様子で、自身のイラストが子ども服として形になったことを喜んでいる。価格も、一人でも多くの人に届くよう、子ども用1500円、大人用2500円という、マーキーズらしい手に取りやすい設定にこだわった。

▼収益を世の中のために
このTシャツによる収益は、病気の子どもとその家族を支える滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」へ寄付される。日本プロ野球選手会は同施設を社会貢献活動の柱の一つとしており、これまでも成績に応じた寄付などの支援活動を継続的に展開してきた。前田選手はかねてより、自身のイラストを私利私欲のために使いたくないという信念を持っていた。これまでもイラスト関連の収益は、被災地支援や障害者施設への寄付などに充ててきた経緯がある。
今回も、前田選手から「売り上げの何%かを協力してもらえたら」という提案があった。子ども服を通じて社会に役立ちたいと願っていたマーキーズは、その思いに呼応。収益の全額寄付を快諾し、「子ども」という共通項を持つ同施設への支援を企業としても後押しすると決めた。

▼マーキーズが貫く哲学
現在、全国に85店舗、海外に2店舗を展開し、コロナ禍以降売り上げを伸ばしているマーキーズ。昨年から、リユース市場にも乗り出した。子どもの成長に伴い短期間でサイズアウトした服を店舗で回収し、ポイントで還元することで、次の買い物を促しながら資源を循環させる仕組みだ。
廣畑専務が心掛けているのは、「お客様に得をしてもらう」という経営哲学。
「品質が高く、デザイン性にも優れた上で、おしゃれな(店舗)空間で手頃な価格で提供できれば、お客様に得をしたと感じていただけると考えています。そのため、さまざまな分野において常に顧客満足を追求し、日々取り組んでいます」。
服を通じてファッションに興味を持ってもらうこと。そしていつか、マーキーズを着て育った子がクリエーターとして同社に戻ってくるような循環を作ること。前田選手の温かなイラストが描かれた一枚のTシャツは、そんな同社の未来への思いも乗せて、全国の店頭へと届けられる。










