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地域を応援したいという寄付者の思いを自治体がすべて受け取れる ふるさと納税の理念を生かすシステムが北海道・興部町でスタート

 地域を応援するという趣旨で2008年度にスタートした「ふるさと納税」。初年度には約81億円だった寄付総額は、2023年には1兆円を突破した。大きく成長した主な要因は、好みの返礼品を選べる仲介サイト(ふるさと納税ポータルサイト)の普及といっても間違いではないだろう。各地の返礼品を見比べることができ、被災地を応援するといった使い方もできる便利なものだ。

 ただ、仲介サイトを利用する自治体は広報や決済を依存しているため、1割程度の手数料を仲介サイトに支払っているといわれている。つまり、1兆円の寄付総額のうち約1千億円が、応援したい地域の外に流出するという事態が起きているわけだ。

 そんな中、受け取った寄付金を外部に流出させることなく、しかも寄付者にもメリットがあるという、新しい仕組みを適用する自治体も現れている。

 例えば、北海道の北東部、オホーツク海沿岸の中ほどに位置する興部町(おこっぺちょう)がそうだ。同町は2025年1月1日(水)から、町公式のふるさと納税サイト「おっこいしょ!」 で、同町の返礼品を掲載している仲介サイトと寄付金額の違いを出して、応援寄付金を募集する。仲介サイトとの差額が最大5000円となる返礼品もあるという。

 興部町のふるさと納税サイト「おっこいしょ!」は、同町にある一般社団法人おこっぺ町観光協会が運営しており、寄付者から受け取るふるさと納税寄付金を町外に流出することなくサイト運営している。地域外にある仲介サイトに手数料を支払う必要がないので、同じ品物でもその分の金額を下げて応援寄付金を募集することができるのだ。金額が下がったからといって町が受け取る寄付額が減るわけではないので、町を応援したいという人にも安心だ。

 また、おこっぺ町観光協会では、道の駅おこっぺ オンラインショップ「OKOKO」を運営しており、寄付者が返礼品で知ってファンになった同町の特産品を、その後も購入することができるようにしている。

 さらに同町では、独自のポイント制度もおこなっており、「おっこいしょ!」から寄附すると納税金額に対して通常1%が付与され、「OKOKO」で購入すると5%が付与される。付与された共通ポイントは、「OKOKO」で利用でき、ポイントを使って「また食べたい」と思った興部町の特産品を購入できるというわけだ。

 ちなみに興部町の基幹産業は酪農と漁業。ふるさと納税の返礼品としてチーズなどの乳製品やホタテなどの海産物が大人気だそうだ。

 ふるさと納税の本来の理念は、納税者が故郷や応援したい地域を納税先に選び、税金の使われ方に関心を持ち、自治体では「まちづくり」の意識醸成を通じて地域活性化につなげていく——というもの。興部町の「おっこいしょ!」や「OKOKO」を見ると、単なるショッピングサイトとは一味違う、「まちづくり」の意識がホンワカと伝わってくるのも面白い。いちど旅行気分でのぞいてみてもいいかもしれない。

豊かな水産業。興部町沙留漁港での水揚げの様子