「漫画の神様」「天才漫画家」と呼ばれる手塚治虫。“天才は天才を知る”という言葉の通り、実は手塚作品の主人公には天才が多く、天才ならではの苦悩や苦難をドラマにして描いている。
そのことを気づかせてくれるのが、10月19日より発売となったコンビニコミック、三栄書房の手塚治虫セレクション『感動!天才たちの奇跡』(税別639円)だ。たとえばブラック・ジャックは天才外科医で、七色いんこは天才役者、そしてミッドナイトは天才タクシードライバーである。
それらの作品の主人公たちがその才能によって見事に事件やトラブルを解決するところは爽快であり、特に今回の収録作品は、その天才たる所以を証明するような物語を中心に構成されている。
たとえば『ブラック・ジャック』の「タイム・アウト」「畸形嚢腫」などではその天才外科医ぶりを遺憾なく発揮し、「はるかな国から」「ホスピタル」「白い目」では名医と呼ばれる医者の鼻を明かす気持ちのいい結末のものばかり。これらの作品を読むだけで『ブラック・ジャック』の面白さが十分に伝わってくる。
特筆すべきは、特別掲載として収録された『ミッドナイト』の最終回だ。あまりにも衝撃的だとして最初の単行本での収録が見送られた幻の物語である。ブラック・ジャックが登場し、その結末に深く関わることから『ブラック・ジャック』のスピンオフ作品と言わしめた問題作。ファン以外にはあまり知られていない一編なので、興味のある人はぜひこの機会に。