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60年を経てついに「新種」記載 埼玉の「県の魚」ムサシトミヨ

生時のムサシトミヨPungitius nakamurai (Paratype、標準体長40.2 mm:さいたま水族館より寄贈)

 埼玉県の「県の魚」、埼玉県熊谷市の「市の魚」に指定されるなど、広く親しまれてきた希少淡水魚ムサシトミヨ。実はこの魚、国際的な魚類分類学の世界では60年以上にわたり“存在しない魚”として扱われてきたのだそうだ。それがついに「新種」として記載された。鹿児島大学総合研究博物館などが所有する標本と、さいたま水族館からの生きた個体に基づいた記載で、学術的にも正式な種として世界に認められることになった。

 埼玉県に生息する希少淡水魚ムサシトミヨは、トゲウオ目トゲウオ科トミヨ属の魚。体長は3.5~6センチで、水温10~18度のきれいで冷たい湧き水があり、水草が茂る細い川に生息している。寿命は約1年。背ビレ、腹ビレ、尻ビレにトゲを持ち、敵から身を守る時などにトゲを出す。

 1963年に初めて報告されて以降、60年以上もの間、正式に種として記載されないままだった。図鑑などには掲載されて広く知られていたものの、トミヨ属魚類では種間・集団間で交雑が起きやすく、属内全体の分類体系が混乱していたことなどから、今まで記載されなかったという。

 知見が蓄積され、ムサシトミヨが他種と明確に分化していることが示されたのを受けての記載。かつては関東地方に広く分布していたが、現在は埼玉県のごく一部にのみ生息しており、野生下での絶滅が危惧されているのだそうだ。今回の研究で種として記載されたことで、保護政策の対象種に指定されやすくなるなど、保全活動の強化が期待されている。