アメリカの大量消費社会の光と影を描いたポップ・アートの旗手アンディ・ウォーホル(1928-1987)の大回顧展が来年2月12日(日)まで京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」(京都市)で開催中。巡回はせずに、京都のみの開催となっている。
アメリカ・ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品のみで構成される日本初の展覧会であり、展示されている絵画・彫刻など約200点および映像15点のうち、門外不出の≪三つのマリリン≫を含む100点以上が日本初公開である。
1950年代に商業イラストレーターとして活躍していた初期の作品から、1960年代に事故や死を描いた象徴的な「死と惨事」シリーズ、アンダーグラウンド映画やテレビ番組などの映像作品、セレブリティー(有名人)たちの注文肖像画、その名声を揺るぎないものとしつつ、カトリックの生い立ちにも触れる晩年の作品などを包括的に展示している。
アンディ・ウォーホルは1956年の世界旅行中に初めて来日し、京都を訪れた。本展では、京都とウォーホルの関係に目を向け、そのゆかりの貴重なスケッチなどを展示し、若き日のアンディ・ウォーホルの心を捉えた京都の姿に思いをはせる。
本展は5章から成る。
〇第1章「ピッツバーグからポップ前夜のニューヨークへ」—―1950年代初頭から60年代にかけて、商業イラストレーターとして一躍評判となった時期の作品を紹介している。
〇第2章「ウォーホルと日本そして京都」—―1956年、ウォーホルは自身への「ご褒美」として世界一周旅行に乗り出した。初めての海外旅行は、彼の人生における重要な転換期と見なされている。6月21日から7月3日までの約2週間を過ごした日本。ウォーホル美術館が把握する限り、ウォーホルはカメラを持たず、スケッチブックに写生しながら旅を記録した。その後、1974年に再来日したウォーホルは、生け花をモチーフにした作品を自身の日本での個展で発表している。
〇第3章「『ポップ・アーティスト』ウォーホルの誕生」—―アメリカでポップ・アートが開花し、ウォーホルはそのムーブメントの中心人物の一人になった。1963年11月にスタジオをニューヨークの東47丁目231番地に移転したウォーホルは、すぐに美術界のトップの仲間入りを果たす。60年代のシルクスクリーンによる作品は、人の手というより「機械でつくられた」かのように見えるだけでなく、当時の大量消費社会を反映したものといえる。ウォーホルは広告の大きな影響力を理解しており、消費者の関心を引くために広告と同様の手法を作品に取り込んだ。
〇第4章「儚さと永遠」――新聞の派手な見出しからハリウッドの憧れのスターまで、日常生活に作品の題材を求めていたウォーホルは、60年代以降、自身を取り巻く、その当時注目を集めた独創的な人々を描いていく。子どもの頃からハリウッドスターに憧れていたウォーホルは、62年、マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリー、エリザベス・テイラーといった有名人を題材とする一大肖像画シリーズの創作を始めた。
〇第5章「光と影」—―最終章では、ウォーホルの複雑な生涯をめぐる諸相を探る。ウォーホル自身、矛盾に満ちた人物として、生と死、公と私、神聖な文化と世俗的な文化といった、相反する主題と対峙していた。本章では、死と闇に焦点を当て、自殺、自動車事故、事故現場を写した雑誌や新聞の画像を使った「死と惨事」シリーズを取り上げている。また。「最後の晩餐」シリーズといった晩年の作品を通して、謎めいたスターであり、ビザンティン・カトリックの信者であったウォーホルの複雑な一面を明らかにしていく。
「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」の開館時間は午前10時から午後6時(入館は閉館の30分前まで)。休館日は月曜日(月曜祝日の場合は開館)、12月28日から1月2日。入場券は土日祝一般が2,200円、平日一般は2,000円、大学・高校生1,400円、中学・小学生800円。