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20世紀芸術の巨匠アンリ・マティス約20年ぶりの大回顧展 東京都美術館で4月27日から開催

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 20世紀を代表するフランスの巨匠アンリ・マティス(1869-1954)。純粋な色彩による絵画様式であるフォービスム(野獣派)を生み出し、モダン・アートの誕生に決定的な役割を果たしたマティスの約20年ぶりの日本における大回顧展が開かれる。

 東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)で4月27日(木)から8月20日(日)まで開催される「マティス展」では、世界最大のマティス・コレクションを誇るパリのポンピドゥー・センターの全面的協力を得て、約150点の名品が紹介される。“フォービスムの夜明け”、マティス初期の傑作「豪奢、静寂、逸楽」が日本初公開される。

 感覚に直接訴えかけるような鮮やかな色彩と光の探求に捧げた一生だったマティスが84歳で亡くなるまでに残した仕事は、今なお色あせることなく私たちを魅了して、後世の芸術家たちにも大きな影響を与え続けている。

 絵画に加えて、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵、そして晩年の最大の傑作であり、マティス自身がその生涯の創作の集大成とみなした南仏バンスのロザリオ礼拝堂に関する資料まで、各時代の代表的な作品によって多角的にその仕事を紹介しながら、豊かな光と色に満ちた巨匠の造形的な冒険をたどっていく。

 展覧会は全8章から構成される。

 〇第1章「フォービスムに向かって」(1895-1909)——マティスは、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローのアトリエに入り、伝統的な画法から離れ、新しい絵画の探求を始める。最初期から、大胆な色彩と筆致による「フォービスム(野獣派)」の立役者としてスキャンダルを巻き起こしながら注目を集めたのち、平面的で装飾的な画面構成を始めるまでの、マティスの20世紀初頭の活動を紹介する。「豪奢、静寂、逸楽」、「アルジェリアの女性」などがこの時期の代表作。

アンリ・マティス《豪奢、静寂、逸楽》 1904年 油彩/カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
アンリ・マティス《豪奢、静寂、逸楽》 1904年 油彩/カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
アンリ・マティス《アルジェリアの女性》 1909年 油彩/カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
アンリ・マティス《アルジェリアの女性》 1909年 油彩/カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

 〇第2章「ラディカルな探求の時代」(1914-1918)——第一次世界大戦中、周りの人間が徴兵されるなかで、ひとり残されたマティスは、その状況に抵抗するかのように、画家の転機となるような革新的な造形上の実験を推し進める。アトリエと開放的な窓というモチーフによって、内と外を融合させながら、ひとつの絵画空間を成立させようとする試みが紹介される。「白とバラ色の頭部」、「金魚鉢のある室内」などが代表的な作品。

 〇第3章「並行する探究―彫刻と絵画」(1913-1930)——彫刻はマティスにとって、その造形活動全体にリズムを与えるものだといえる。絵画のアイデアが素材との接触のなかで模索されている転換期に、彫刻があらわれてくるのである。20年にわたって探求されたモチーフである「背中」シリーズなど、主要な彫刻作品を紹介しつつ、絵画と彫刻の往還によって紡がれるマティスの造形的な実験をたどっていく。

アンリ・マティス《背中Ⅰ‒IV》1909-1930年 ブロンズ ポンピドゥー・センター・国立近代美術館
アンリ・マティス《背中Ⅰ‒IV》1909-1930年 ブロンズ ポンピドゥー・センター・国立近代美術館

 〇第4章「人物画と室内画」(1918-1929)——1920年代、ニースに居を構えたマティスは、以前よりも小さなカンバスを用いて、肖像画や室内画、風景画を描き、伝統的な絵画概念に向き合うようになる。本章では、これまでの造形的な実験をマティスが再検証した10年間の試みを紹介していく。イスラムのスルタンに仕える女性「オダリスク」が、この頃からマティスにとって重要なモチーフとなっていく。

アンリ・マティス《赤いキュロットのオダリスク》 1921年 油彩/カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
アンリ・マティス《赤いキュロットのオダリスク》 1921年 油彩/カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

 〇第5章「広がりと実験」(1930-1937)——1930年代のマティスは、アメリカやオセアニアを旅し、新しい光と空間に触れながら、再び豊かな造形上の探求に戻る。本章では「夢」など、最晩年までマティスの特別なモデルとなるリディア・デレクトルスカヤを描いた作品を中心に、絵画のフォーマットに人物の形態を挿入する方法について、無数のバリエーションを伴いながら追求したこの時期の試みなどを紹介する。

 〇第6章「ニースからバンスへ」(1938-1948)——再び戦争が始まり、高齢と病気のためにフランスを離れることをあきらめたマティスは、療養を続けながらニースからバンスへと居を移す。彼は寝たきりの時期であってもドローイングや本の挿絵の制作などに没頭し、ドローイング集『主題と変奏』をはじめとする重要な仕事を残した。

 〇第7章「切り紙絵と最晩年の作品」(1930-1954)——1930年代から習作のための手段として用いられてきた切り紙絵が、40年代になると、マティスにとって長年の懸案であった色彩とドローイングの対立を解消する手段として、重要なものとなっていった。本章では「ハサミで描く」というこの画期的な手法によって生み出された、巨匠の最晩年の作品を紹介していく。グワッシュで彩色された鮮やかな切り紙絵による書籍『ジャズ』、アトリエの壁に設置された2枚組の大作「オセアニア」などが展示される。

 〇第8章「バンス・ロザリオ礼拝堂」(1948-1951)——最晩年、マティスはバンスのロザリオ礼拝堂のためのプロジェクトに没頭する。建築、装飾、家具、オブジェ、典礼用の衣装などの総合芸術のために、マティスは、ドローイング、彫刻、切り紙絵など、これまでに探求してきた技法を駆使して、光と色と線が融合する空間の創出を目指した。

 「マティス展」は日時指定予約制。休室日は月曜日と7月18日(火)。ただし、5月1日、7月17日、8月14日は開室。開室時間は午前9時半から午後5時半(金曜日は午後8時まで)。入室は閉室の30分前まで。観覧料は、一般:2200円、大学生・専門学校生:1300円、65歳以上:1500円。小・中・高校生は無料。チケットの発売と日時指定予約は4月13日(木)午前10時から。詳細は展覧会公式サイトを参照。問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。