最近増えてきたナチュラルワインや、伝統的な製法で作られる日本酒。農薬などを使っていないなどの点からヘルシーであることはもちろん、生産そのものが自然環境にも優しいという利点がある。人類が生きていくのに不可欠な農業。しかし現代社会における農業は、大量生産や単作などの理由で温室効果ガス排出の大きな要因となってしまっている。このような中、土壌が持つ二酸化炭素(CO₂)の吸収力(炭素貯留)に着目が集まっている。食品ブランド「プロビジョンズ」を通して、地球温暖化などの“解決策となる食”を提案している「パタゴニア」(パタゴニア・インターナショナル・インク・横浜市)は、生物多様性などを生むアグロフォレストリー農法などで栽培されたブドウや米を使ったナチュラルワインと自然酒のコレクションを発売した。
昨年に続き2度目となるこの“自然発酵”コレクション。新たに加わるのは、フルーツ・ペットナット(自然発酵のスパークリングフルーツワイン)などのナチュラルワイン3種類と、米作りからこだわった日本酒2種類。スウェーデンの生産者「フルクステレオ」が作るペットナット「リッスン・トゥ・ユア・フルクト」(750mlで税込み3,520円)は、りんご・プラム・ぶどうが原料のフルーツワイン。無ろ過・無添加で、廃棄される果物を活用することでフードロスにも取り組んでいる。アルコール度数6%。ぶどうが糸を引くラベルの絵は、機械や農薬で自然と戦うのではなく、私たちは自然を助けるべきだというメッセージを表したもの。
蔵元「仁井田本家」(福島県郡山市)の日本酒「しぜんしゅ-やまもり」は、酒蔵周辺にある山を守るという気持ちと、楽しいことが山盛りという意味合いをかけたネーミング。仁井田本家ではすべての日本酒を手間暇のかかる生酛(きもと)造りで行っていて、木桶も自社山のスギを活用した手作り。使用しているのは、こうじ米・掛け米ともに自社田で栽培した農薬・肥料不使用のお米。精米歩合85%。アルコール度数13%。720mlで同2,200円。
酒元「寺田本家」(千葉県神崎町)の「繁土(ハンド)」は、農薬・化学肥料を使わずに栽培された地元のお米と近隣神社の御神水を使った自然酒。自家培養したこうじ菌を使用しているほか、酒造りの全工程を手作りで行っている。商品名「繁土」には、田んぼの生物や酒造りの微生物(こうじ菌など)が豊かに繁栄してほしいという思いと、手作り(ハンドメイド)の両方の意味を掛け合わせている。アルコール度数15%。720mlで同2,090 円 。
2023年1月発売予定の「ピステムッタ」(フランク・コーネリッセン、イタリア)は、地中海沿岸で2,500年以上も前から続く伝統的な栽培方法で作られたナチュラルワイン。オリーブの木やソバを一緒に育てることで、土の保水性を高めたり雑草の繁殖を抑えたりしているという。品種は、シチリア島エトナ山の固有種「ネレッロ・マスカレーゼ」。ロッソ(赤)とロザート(ロゼ)ともに、750mlで同4,400円。
パタゴニアでは、12月9日(金)~18日(日)までの10日間、イベント「なぜ、パタゴニアが自然酒なのか?」を東京・下北沢で開催する。蔵元を迎えたトークセッションを行うほか、ポップアップストアをオープン。レストランスペースではナチュラルワイン・自然酒のコレクションを試飲できる。さらに、環境に関連した本を販売するブックフェアや蔵元との角打ちイベントもある。