まめ学

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】つながりが力を与える、苦しい時ほど

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】つながりが力を与える、苦しい時ほど

2023年8月27日=1,604
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


先日プロ野球ナイトゲームをテレビで観戦した。地元・中日vs横浜戦。物議を醸した9回、あの試合だ。ファン、関係者などさまざまな意見もあるなか、一個人の感想を申し上げる。

っぱり現地・野球場で観戦した~い
っぱり現地・野球場で観戦した~い

▽3/4弟

ところでこの試合、わたしが勝手に“3/4弟”と呼ぶ大〇洋平選手(編注:「大島洋平」選手と「大橋洋平」の名前が4文字中3文字一致している)の2000本安打が達成されそうだったため、開始直後からテレビを視聴するつもりやった。

ところが試合開始の午後6時、まだ中継されてない。なっなんと、中継開始は7時30分からとなっとるやんかぁ。試合前現在、1998本安打だ。中継が始まった1時間半後にはもう2000本安打が達成されてたら、どぉしてくれる! ライブで見たいんや、オレは。ならば現地バンテリンドームへ行けと言われるでしょうけれど、そうそう前もって目星をつけてチケットを買えるもんやない。実際何度かドームに足を運んでいるけれど、その瞬間には立ち会えへんかった。

まあこんな訳で放送が始まると、「あと1本」のテロップが。ホッとした。えっ、じゃあ1本は打ったってことや。危ない、危ない。テレビ局に愚痴を言いつつも、未達成だったことに感謝した。しかし後の打席でもヒットは出ず、大島選手は4打席目を終えた時点で交代となった。

▽初登板で10失点

バンテリンドームで行われている中日vs横浜戦の試合経過も8対2で横浜リードのまま、9回オモテ横浜の攻撃を迎えた。ここで、いまから起きる出来事を誰が予想できただろうか。

マウンドには新人ではないものの、今季1軍初登場の投手だ。彼はさぞ喜びと不安を抱えての登板であろうと勝手に想像した。なのに、タイムリー安打を打たれ、フォアボールにデッドボールも与えしてしまい失点を10と重ねた。交代してもらうこと全くなく、彼は9回オモテを60球あまり、独りで投げ切った。一軍の厳しさを突き付けられながらも、頑張り続けた彼には心より拍手を送りたい。

▽ひとこと言いたい

ひと言モノ申し上げたいのは、中日ベンチに対してだ。この間コーチあるいは監督など誰一人も投手の元へ歩み寄らなかった。もちろんここで明日以降に投手を温存したかったなど、野球論をあれこれ論じる立場にオレはない。一ファンに過ぎないから。

それはそれとして、彼には大変なこと・苦しいことが起きているのである。であればこそ、なぜそばに行って言葉をかけてやらないのか。いや言葉などなくても、一息いれるだけでええ。ひと休みすることで、心身がリフレッシュされること、誰しも体験しているはずだ。言葉がけ・そばにいるなどの「つながり」が力になることは大いにある。苦しい時ほど。

元気な時、調子の良い時って、つながりなんて恐らく必要ないでしょう。自力でやりこなせるから、自分でやれる余力があるから。でも元気でなくなった時、調子の悪い時は、そうはいかない。人生でもおんなじだ。

勝利のためには、チーム内のつながりが欠かせない
勝利のためには、チーム内のつながりが欠かせない

▽手当て

イニングの途中で彼の顔からは生気が失われていったようにテレビの画面からもうかがえたし、デッドボールを与えた後の動作はまるで何かの謝罪会見のようだった。

「つながりが力を与える、苦しい時ほど」

患者としても医者としてもどっぷり漬かっている医療現場もまさに同様だ。例えば、痛みが生じた場面。痛み止めの薬が必要な時に薬を頼るのは当然だが、痛む部位に手を当ててもらうことで痛みが和らぐことさえある。まさに手当てだ。

自らへの反省を込めて、中日ドラゴンズにエールを送りたい。そして近藤廉投手、ぜひ試合に戻ってきて。次の登板も必ず応援するから。ちなみに当試合の翌日、大島洋平選手が祝・2000本安打達成。ホントにおめでとお~

ところでユーチューブらいぶ配信、しぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。

そして恐れながらご登録いただけますと、後日でも録画視聴できまする。応援、やっぱり力になります。ごひいきのほどなにとぞよろしくお願い申し上げまぁす。

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。