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ヘアロスに対する偏見解消など145件 大同生命事業団が助成金交付

助成金交付を喜ぶ「アルペシア・スタイル・プロジェクト・ジャパン」の土屋光子代表(右)。中央は大同生命厚生事業団の工藤稔理事長=2023年9月25日、東京都港区のホテルアジュール竹芝

 社会課題の解決に寄与する活動・研究に対して「助成金」を毎年度交付している大同生命厚生事業団(大阪市)はこのほど、総額2千万円に上る「2023年度助成金」の交付先145件を発表した。

 脱毛症や抜毛症など「ヘアロス」(髪の毛やまつ毛がなくなる症状)に対する社会の偏見をなくしていく取り組みや貧困家庭の児童らに対して食事を提供する「子ども食堂」の活動、地域の外国人との交流促進活動など、多様性の推進や格差社会の是正に地道に取り組む優れた活動などに助成金を交付する。

 交付先のうち、関東を拠点に研究・活動する個人6人と29団体の代表を招き東京都内で9月25日に開いた「関東地区助成金贈呈式」では、大同生命厚生事業団の工藤稔理事長が、一人一人に贈呈状を手渡し、各自の取り組みをたたえた。工藤理事長は「皆様の日ごろの地道な研究・努力の積み重ねによって保険、医療、福祉の発展向上、社会問題の解決が図られる」と今後のさらなる成果に期待を寄せた。

助成金の贈呈状を手渡す大同生命厚生事業団の工藤稔理事長(中央)

 

 助成金10万円を交付された、ヘアロスへの偏見解消を目指す特定非営利活動法人「アルペシア・スタイル・プロジェクト・ジャパン」(東京都中央区、略称ASPJ)の土屋光子代表は「助成金は、脱毛症や抜毛症など毛髪疾患に対する理解促進の啓発イベントや毛髪疾患当事者間の交流イベントなどの活動資金に使う」と話した。

ASPJは2017年、土屋代表ら女性3人が立ち上げ、21年に法人化。約30人のボランティアが啓発活動に取り組む。悩み事などを相談できるASPJのコミュニティーサイトにはおよそ5千人が登録しているという。

ヘアロスへの正しい知識と対応を解説した「毛髪疾患サポートハンドブック」も作成した。9月23日には関係者120人が集まり渋谷駅前で街頭デモを行い、へアロスへの理解を社会に訴えた。土屋代表は「創設者3人の女性は、ヘアロスは、かわいそう、でなく、かっこいい、と考え、それを社会に訴えるため活動を始めた。現状ではヘアロスへの理解はまだまだ社会に広がっていない。ヘアロスがからかいの対象になるなど、“見た目”をあげつらう言動は社会に多い。脱毛症や抜毛症の子どもがウィッグ装着をヘアロスへの無理解から学校で禁止される事例もある。ヘアロスへの偏見をただして、ヘアロスの誰もが生き生きと過ごせる社会に変えていきたい」と語った。

助成への感謝を述べたNPO法人「国際交流ハーティ港南台」の宮本正文代表

 

 同じく助成金額10万円を交付された、外国人の日本語学習支援など多文化共生の地域社会づくりに取り組むNPO法人「国際交流ハーティ港南台」(横浜市)の宮本正文代表は「日本語学習は1対1のマンツーマン指導。約30人の外国人に教えている。約30年前の1992年から活動を始めたので、活動メンバーの高齢化が進んでいる。メンバーの高齢化と毎年度収支赤字の活動資金ねん出が課題だ。今回の助成金はとても助かる。大切に使いたい」と助成に感謝した。

研究成果の見通しを述べた中山孝子・千葉県衛生研究所研究員

 

 助成金30万円を交付された、中山孝子・千葉県衛生研究所研究員は「バンコマイシン耐性腸球菌の分子疫学的解析方法の検討」に関する研究が評価された。中山研究員は「この研究で、薬剤耐性菌の一種であるバンコマイシン耐性腸球菌の感染源や感染経路を特定することに寄与したい」と研究成果の見通しを述べた。

助成金の交付は大同生命厚生事業団発足の1974年度から毎年度実施。助成金額は1件原則10万~30万円。2022年度までの累計助成金額は17億2557万円、累計交付件数は4528件に上る。今回の助成先145件は同事業団ホームページに掲載している。