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親子で牛の乳搾りなど体験 雪印こどもの国牧場「牧場まつり」

乳搾りを体験する子ども=雪印こどもの国牧場、2023年11月12日
乳搾りを体験する子ども=雪印こどもの国牧場、2023年11月12日

 

 都心に近い牧場として長年親しまれている「雪印こどもの国牧場」(横浜市)で11月11、12の両日、恒例の「牧場まつり」が開かれ、大勢の親子連れらが牛の乳搾りやバター作りなどを体験して楽しんだ。

 雪印こどもの国牧場は、約100ヘクタールの雑木林の自然を生かした遊び場「こどもの国」の中にあり、乳牛29頭やヒツジ22頭のほか、ポニーなどたくさんの動物を飼育している。
牧場内には牛乳を作る施設もあり、乳牛の生乳を使った特別牛乳「サングリーン」やソフトクリームなども販売する。

来園者から餌をもらうヒツジ
来園者から餌をもらうヒツジ

 

 牧場まつりは1972年に始まり毎年開催。牧場のない風景の中で育った多くの子どもたちが、スーパーなど店頭に並ぶ紙パック牛乳がどのようにして作られるのか、牛からどうやって乳を搾るのかなど、牛乳・乳製品の生産過程や酪農現場の一端を知る貴重な“食育”の機会となっている。主催は「こどもの国」を運営するこどもの国協会(横浜市)と雪印こどもの国牧場(横浜市)、協賛は雪印メグミルク(東京都新宿区)。

 12日は肌寒い曇り空となったが、毎年人気の乳牛の乳搾り体験には多くの親子連れが牛舎の前に列をなした。乳頭のつかみ方などを教えてもらった子どもたちは、大きなホルスタイン牛の乳にこわごわと手を伸ばし乳が出るのを確かめながら、手先を器用に動かしていた。

じっとして子どもたちに乳を搾らせるホルスタイン牛の「ベルリン」(7歳)
じっとして子どもたちに乳を搾らせるホルスタイン牛の「ベルリン」(7歳)

 

 父親と一緒に参加した小学3年の男児は「面白かったけど、牛の乳(乳房)は固かった」と語った。妹の幼稚園児は「楽しかった」と満足した様子。2人を連れて東京都都世田谷区から来た父親(40)は「牧場まつりには通算10回ぐらい来ていますね。子どもは、牛の乳搾りを毎回楽しみにしていますし、ポニーに乗ることも大好きです。牧場では自然に触れるいろんな体験が気軽にできます」と話した。

 牧場の工場で生産する牛乳本来の風味が味わえる特別牛乳「サングリーン」で作るバター作り教室も盛況で12日午前の開催回には16組の親子が参加した。

 「サングリーン」は搾りたての生乳の味わいをより残すためにあえて脂肪の均質処理をしない「ノンホモ牛乳」といわれる低温殺菌の特別牛乳。「サングリーン」をペットボトルに入れて10分ほど振り続けると、バターになる脂肪成分が分離して粒状の塊ができる。この塊をクッキングペーパーでこすなどすればバターになるという。

バターを作るためペットボトルに特別牛乳サングリーンを注ぐ子どもたち
バターを作るためペットボトルに特別牛乳「サングリーン」を注ぐ子どもたち

 

 子ども3人と参加した母親=川崎市=は、バターの完成目指して親子4人で代わる代わるペットボトルを一生懸命振り続け、脂肪成分を分離させバターとなる“脂肪の塊”を作っていった。ペットボトルに入れた「サングリーン」の量は500ミリリットル。小さな子どもにとってはちょっぴり重い。兄弟で交代、交代、力を合わせて振り続けた小学3年の女児は「ちょっとつらかった」とバター作りの大変さを味わった。母親は「バターの作り方を知って子どもたちはびっくりしていました。ウェブサイトで牧場まつりのことを知りましたが、子どもたちが楽しみながら貴重な体験ができるいい催しだと思います」と話した。

ゴールに向かう5頭の子ヒツジ
ゴールに向かう5頭の子ヒツジ

 

 そのほか、牧場でひときわ大きな歓声が起こったのは、牧場で今年1~3月に生まれた5頭の子ヒツジが俊足を競う「羊レース」。勝者を予想し、当たれば牧場で販売する焼き菓子(こどもの国サブレ)がもらえた。

 レースのスタートは“各ヒツジ一斉”とはいかずに、ゆっくりとしたほほ笑ましい出足となったが、柵越しに子どもたちの声援を受けて序盤に抜け出した「ライバルを焦がす熱い情熱」の異名のある2月17日生まれの子ヒツジ「ナリタジンギスカン」がトップでゴールした。

 レースはあっという間に終わったが、子どもたちは目の前を疾走したばかりの子ヒツジの姿を目でしばらく追っていた。

牧場スタッフ手作りのヒツジレース出走表
牧場スタッフ手作りの羊レース出走表

 

 雪印こどもの国牧場がある自然豊かな遊び場「こどもの国」は、全国から寄せられた「結婚祝い金」を「子どものために使ってほしい」と願った上皇・上皇后の希望を受けて、お祝い金を基金に1965年5月5日に開園した、「次世代を担う子どもの健全育成」を目的にした児童厚生施設だ。開園半年後の65年11月4日には「第一回こどもの国全国会議」(子ども79人の代議員で構成)を開き、「この国をこどもの手で治め、こどもの力で育てるため、『こどもの国けんぽう』を、つぎのとおりきめます」という格調高い前文を掲げ、「おたがいに動物や植物をかわいがり、平和な国にします」「進んで自然などから学び、知性あふれるゆたかな国にします」などと定めた「こどもの国けんぽう(草案)」を採択している。

雪印こどもの国牧場内の牛舎。2015年5月、天皇・皇后当時の上皇・上皇后はこの牛舎を視察した
牧場内の牛舎。2015年5月、天皇・皇后当時の上皇・上皇后はこの牛舎を視察した

 

 「こどもの国」の中にある牧場は、両殿下のご意向に全面的に賛意した当時の雪印乳業株式会社(現 雪印メグミルク株式会社)が建設、国に寄贈し、1965年にオープンした。「こどもの国」牧場開園60周年と雪印メグミルクグループ創立100周年の節目を迎える2025年は、牧場内の施設の各種更新が計画されている。

 計画では、牛乳製造設備の更新のほか、食の生産現場に触れることが少なくなった子どもたちのために、雪印メグミルクグループが力を入れている食育活動の充実化を踏まえた方向も検討しているという。

 雪印メグミルクでは、給食などで身近な牛乳のことをもっと深く知ってもらおうと、栄養士などの食育スタッフが学校に出向いて牛乳の生産方法や栄養素などについて話す小中学生対象の「食育出前授業」も実施している。コロナ禍以降はオンライン形式の同授業も始めた。

 問い合わせや申し込みなど詳細は、はばたけラボHPまたは、はばたけラボ事務局(東京都港区、共同通信社企画事業部)、電話03(6252)6031、ファクス03(6252)6037、メールアドレスhabatakelab@kyodonews.jpまで。