「Cö shu Nie」は宇宙だ【山崎あみコラム音楽の森】

　男女2人組ロックバンド「Cö shu Nie （コシュニエ）」の音楽は、一言で言うと「宇宙」です。どこまで続いているのか分からない。目を開くたびに違う景色を見せてくれる。正体がつかめない恐怖もあるけれど、美しさに誰もが魅了されてしまうような宇宙の魅力は、私の中のコシュニエ像と重なります。

音楽の森使用写真Cö shu Nie — 男女2人組ロックバンド「Cö shu Nie （コシュニエ）」

　ボーカル・ギター・キーボードの中村未来（みく）さんは独自のコンセプトを描き、作詞作曲を手がけていて、「監督」と呼ばれています。ベースの松本駿介さんは、監督の意図をくみ取って変幻自在、ハイレベルな演奏を繰り出します。メジャーデビューは2018年。以来、人気アニメのテーマ曲も多く任されています。

　ロック、クラシック、ジャズ、ポップスなどの要素を全て取り入れて「バンドサウンドの激しい楽曲」から「繊細なバラード」まで多彩に表現し、いい意味で〝最高にカオス〟な音を鳴らします。楽曲が出るたびに全く違う顔を見せてくれる楽しさは、最近のシングル2作「no future」と「Burn The Fire」を聴くだけでも実感できます。一つの曲の中だけでテンポや曲想が怒濤（どとう）の変化をみせることもあって、どれが本当の姿? と思わず追ってしまう。気がつけば、心をわしづかみにされている感覚です。

　そして何と言っても、お二人が放つ音色のバランスが果てしない魅力。中村さんの声はかわいさ、美しさ、はかなさを兼ね備えていて、例えば、シングル曲「夢をみせて」のように恋の終わりを描いた歌であれば、聴いている自分が本当に失恋したのかと感じるところまで引っ張っていってくれる。ブラックホールのような吸引力があります。松本さんのクールで重みのあるベースは楽曲を支えつつ、ひずみによって立体感を生んでいます。どんなフレーズも、松本さんが弾くと松本さんの音になる。2人の音色がかけ合わさったとき、コシュニエにしかつくれない世界が広がっていきます。

　そんなお二人は、普段もクールで謎めいた感じかなと思ったら、愛嬌（あいきょう）爆発。私が担当しているラジオ番組に1カ月間ゲスト出演してくださると、ずっとニコニコ、関西弁で、おちゃめで、衝撃的にお話ししやすい。松本さんは意外にもサンリオのキャラクター「ハンギョドン」が大好きだそうです。お二人とも制作中は毎日プリンを食べていて「もはや楽曲にプリンの匂いが染み込んでいるかも」なんて言うんです。

　1カ月のゲスト出演後は、松本さんがわざわざお礼の手紙を送ってくださるなど、なんてハートフルなお二人なの! 楽曲と普段とのギャップがすてきな上に、どんどん新しい一面が見えてくる。目が離せません。

【KyodoWeekly（株式会社共同通信社発行）No. 6からの転載】