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踊れてキュンな夕方感、Omoinotake 【山崎あみ コラム音楽の森】

 今とても勢いがあって、「踊れて泣ける」といわれる3人組「Omoinotake」(略称オモタケ、写真)は、ギターレスバンドです。ボーカル&キーボードの藤井怜央さん、ベースの「エモアキ」さんこと福島智朗さん、ドラムの冨田洋之進さんから成り、3人とも島根県出身です。

 2021年、アニメ「ブルーピリオド」のオープニングテーマ「EVERBLUE」でメジャーデビューを果たしました。今年1月期のTBS系ドラマ「Eye Love You」の主題歌「幾億光年」は大ヒット。藤井さんが高音で歌い切る曲で、キュンとする場面に欠かせない存在でした。新曲「蕾」は人気テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第7期(5月4日から放送)のエンディングテーマとして書き下ろされました。

「Omoinotake」(略称オモタケ、写真)
「Omoinotake」(略称オモタケ、写真)

 バンド名は、福島さんが好きな言葉「思いの丈」に由来していて、重たくならないように英字表記にしたそうです。楽曲も同様で、福島さんが紡ぐ歌詞はストレートでハートフルなのですが、重たすぎる印象にはなりません。作曲を担う藤井さんが生み出すのは、ポップで踊りたくなる曲が多いからです。さらにピアノの音色が、しっとり感や独特の色気を与えているように感じます。

 そして何と言っても、藤井さんの柔らかな歌声は唯一無二。はかなさ、芯の強さ、温かさ、心地よさを兼ね備えています。オモタケの楽曲を聴くと、海辺の美しい夕陽を見ているような気持ちになりますし、体はひとりでに揺れだします。彼らが夏フェス「サマーソニック」に出演した時はステージがまさにオン・ザ・ビーチで、駆け付けた私は「最高!」となりました。

 藤井さんは、実際にお話しするとクールな印象なのですが、内側に熱を秘めていて、ライブのMCでは、それが語りにあふれてきます。歌う声量の大きさにも驚かされますので、ぜひライブに足を運んでみていただきたいです。

 お薦めの曲はたくさんありますが、例えば「EVERBLUE」は冒頭でノリのいいピアノが響いただけで体が動いてしまいます。「心音」は、本当に温かで真っすぐな歌詞と、それをサラッと聴かせてくれるサウンド、声のバランスが絶妙です。「夏の幻」は、不安感が漂うような音の進行をしながら情景を描写する歌詞が続き、サビで切なる願いが放たれる曲で、私は「夏の一曲」に挙げさせていただいたことがあります。

 それにしても、ひと昔前、島根県でいったい何が起きていたのでしょうか。オモタケと「Official髭男dism」、「Saucy Dog」の石原慎也さんという、大活躍中の同世代ミュージシャンが全員、島根出身や島根大出身なのです。

山崎あみ(やまざき・あみ)/1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時~8時50分)メインDJ。YouTube番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。共同通信社制作)金曜出演中。