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「光る君へ」第十一回「まどう心」互いの思いとは裏腹に、さらに開くまひろと道長の距離【大河ドラマコラム】

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。3月17日に放送された第十一回「まどう心」では、藤原兼家(段田安則)によるクーデター“寛和の変”の事後処理、およびそれに伴う主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の行動が描かれた。

(C)NHK

 兼家のクーデターによって花山天皇(本郷奏多)が退位。これにより、官職を失った父・藤原為時(岸谷五朗)を救おうと、旧知の源倫子(黒木華)から「おやめない」と止められていたにもかかわらず、摂政となった兼家の元に直談判に訪れるまひろ。そして「どうか、父に官職をお与えください」と必死に懇願するが、兼家からは「わしの目の黒いうちに、そなたの父が官職を得ることはない」と一蹴される。

 このとき、兼家の邸宅である東三条殿を訪れたまひろが、「ここが、あの人(=道長)の家…」と思いをはせるモノローグや、兼家が道長に「虫けらが迷い込んだだけじゃ」と告げる一幕もあり、同じ「貴族」でも、まひろと道長の間に横たわる厳然たる格差が強く印象付けられた。

 こうして、自分の立場を思い知ったまひろは、為時のことはやむなく諦めるが、諦めきれないのが、道長への思いだ。

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 道長は、一条天皇即位の際、高御座のトラブルを無事に処理したこともあり、兼家の力によって出世。さらにまひろとの距離が開くこととなった。だが、その距離が開けば開くほど、ますます強くなるのが、互いへの思いだ。それを埋めようとした道長は、「妻になってくれ」とまひろに告げる。だがまひろは「正妻は無理だが、妾(めかけ)に」という道長の申し出を受け入れることができない。結局、「勝手なことばかり言うな」と憤慨した道長はその場を去り、そのまま兼家に「お願いがございます」と申し出る。その道長の「お願い」とは、果たして一体何なのか。

 もどかしい2人の関係が強く印象に残るが、それと同時にこの回、忘れてはいけないのが、まひろと倫子のやりとりだ。「なぜ倫子さまは、婿をとられないのですか」と尋ねるまひろに、倫子は「私、今狙っている人がいるの」と打ち明ける。倫子が思いを寄せる相手が道長であることは、視聴者にとっては周知の事実だが、それを知らないまひろは「それは、どなたでございますか?」と無邪気に尋ね、「言えない」と答える倫子と共に笑い合う。立場的に、まひろよりずっと有利な倫子は、どのように道長にアプローチしていくのだろうか。そして、それを知ったとき、まひろはどうなるのか。

 ケンカ別れしたまひろと道長。そして、その間に割って入りそうな倫子。次回予告では「私は生涯、猫しか愛でません」と思い詰めたように語る倫子の姿や、「まだ三郎と付き合ってたの」と弟・惟規(高杉真宙)にからかわれるまひろの姿も見られた。「思いの果て」というサブタイトルの意味も含め、3人の関係がどうなるのか、気になるところだ。

(井上健一)

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