江口洋介が主演する「連続ドラマW 誰かがこの町で」が、8日からWOWOWで放送・配信がスタートした。本作は、2020年に江戸川乱歩賞を受賞した佐野広実氏の同名小説が原作。とある新興住宅地を舞台に、住民たちの間に渦巻く“同調圧力”と忖度(そんたく)が引き起こす集団心理の恐怖を、生々しく鮮烈に描いた社会派ミステリー。
本作の主人公で法律事務所の調査員・真崎雄一を演じる江口と、真崎のバディとして“ある町”に隠された恐ろしい真実に迫っていく少女・望月麻希を演じる蒔田彩珠に、お互いの印象や作品の見どころ、自分自身に課しているマイルールなどを聞いた。
-お2人は世界的なヒット作「忍びの家 House of Ninjas」(24年)で、忍び(忍者)の親子として共演して以来の再タッグとなります。お互いの印象や、前回共演されたときと比べて変化したところがあれば教えてください。
江口 今回、蒔田さんはいろいろな過去を背負っている役だったのですが、最初に蒔田さんがやると聞いたときに「忍びの家」で演じていたあのときの目を思い出して、彼女なら大丈夫だと思いました。「忍びの家」のときも特殊な家庭でしたが、今回は話が進んでいくうちに疑似家族のようになる関係性なので、最初はいい距離感を保ちながら芝居をしていきました。蒔田さんは影があるような表現もできますし、ストーリーが進むにつれて彼女が演じる麻希が再生していく姿も感じられて、僕も一緒にそういった時間を共有できたなと思っていますし、会うたびに成長しているので楽しみです。
蒔田 「忍びの家」のときはアクションがあったり、親子役ということもあったので、私の中での印象は“明るい江口さん”だったのですが、今回は内容的にも役に真っすぐに没頭されていたので、前回とのギャップを感じて、すごい俳優さんだと改めて思いました。「忍びの家」のときとは全く違う江口さんだ…と思いながらも、こんなに早くまた共演させていただけるとは思っていなかったですし、今回もいろいろなことを受け止めてくださって、うれしかったです。
-本作は新興住宅地をまとめる地区長と防犯係が住民に“ルール”を課すことで悲劇が繰り返される物語で、人間の集団の同調圧力の怖さが描かれていますが、この作品を通じて考えが変わったことや、新たな気付きはありましたか。
江口 集団の同調圧力から起こる事件はすごく多いですし、見て見ぬふりをすることから始まってしまうことも結構あるのだと思います。人間生活の中においてルールは大事ですよね。ルールがなかったら車の運転一つにしても大変なことになってしまう。例えば、今日が燃えるゴミなのか、燃えないゴミなのかという「ゴミ出しの日」のルールを無視して出していたら、周りの人は、それはおかしいよとなるだろうし、でも1日くらい待ってもいいじゃないと思う人もいるかもしれない。でも、それは日本のルールであって、海外に行ったらまた全く違いますよね。生活していくうえではルールは切り離せないけれども、こういう作品を見て、自分に少し行き過ぎている部分がないかなと、考えてもらえるだけでも、この作品を作った意味があるのではないかなと思います。ルールと協力や同調は紙一重だなと思います。
蒔田 1つの町で起こっていることですが、例えばどこかのマンションだったり、実はどこにでもあり得るお話なのかなと思いました。私が演じた麻希は年齢が若いので、自分の中でこの人が正しいと思ったり、何を信じてお手本とするのかという判断が未熟な年齢ですが、自分で判断しなくてはいけない境遇だったので、作品を見てくれた方が麻希の年齢に近づいて、自分はどうだっただろうと振り返っていただけたらと思いますし、私と同じ年代の人が見たときに、どう思うのかなというのも気になりました。