未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。
今回ご登場いただくのは、滋賀県にあるヤンマーホールディングスの中央研究所で働く畑迫芳佳(はたさこ・よしか)さん。研究者としての仕事のやりがい、楽しさ、目指す生き方を聞いた。
Q.1 研究者になろうと思ったきっかけは。
高校生の頃、人とのコミュニケーションが苦手だと感じる一方で、人との関わりは持ち、役に立ちたいという思いがあって。日本で初めて飛行機を作ろうとした二宮忠八の本を読み、新しいモノを作ったり、機械を整備したり、直接でなくても間接的に人の役に立てる仕事をしたいと、理系を選んだんです。大学院で、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電材料を研究しました。
故郷の田んぼでは、ヤンマーのトラクターがたくさん活躍していて、就活で、どんな会社だろう? と調べると、エネルギー事業があることが分かり、勉強したことを生かしたいと思ったんです。
Q.2 今の仕事の内容を教えてください。
入社の翌年から、工場などで排出される熱エネルギー(廃熱)を二酸化炭素(CO2)の含まれない電力に変換して利用できる熱電発電システムの研究に携わり、18年からはプロジェクトリーダーを務めています。実は、国内の石油、石炭、天然ガスといった一次エネルギーの約6割が熱として捨てられているんです。熱電発電システムでは、その廃熱を有効活用します。ゼロから始めた研究開発が終わり、システムの商品化に取り組み始めました。
Q.3 ゼロからの立ち上げは苦労があったのでは。
当初は、小さな発電出力の基礎研究だったのですが、環境省の委託事業となり、工場などにも導入できるキロワット級まで出力を引き上げることになりました。プロジェクトリーダーになったばかりの頃で、うまくアクションプランを決められず、とても苦労しました。目標値と達成時期を考慮してタスクを定め、タスクの優先度や誰がいつやるか等を明確に決める、といったプロジェクトマネジメントを意識して、とにかく一生懸命にやっていきました。
今の仕様(発電出力9.5キロワット)に近づいたころ、後輩も加わり、耐久性検査を進め、最終のシステム設計や製作が完了しました。お客様のところに導入し、今はモニター実証もしています。後輩たちも頑張ってくれて、今に至ります。できあがった時は、本当にうれしかったですね。

Q.4 リーダーとしてのやりがいは?
研究者というと、施設にこもって実験をしている印象かもしれないですが、実際にお客様と話したり、展示会で市場調査のヒアリングをしたり、実際に工場を見せてもらったり、といった機会が増えました。昔、人とかかわることが苦手だった割に、今はそういう仕事が楽しい。お客様だけでなく、商品化を担当する部署との調整も含め、プロジェクトマネジメントがやりがいになっています。
Q.5 1歳半の息子さんのお母さんでもありますね。
昨年11月に育児休暇を終えましたが、子育てと仕事の両立は大変ではあります。今まで通り仕事をしたいが、難しい。でも、どっちも頑張りたい。ダイバーシティ担当部署に相談し、子育てしながら働く先輩の女性社員と話しました。
「自分から積極的に発信した方が理解してもらいやすいよ」と助言され、「こういう働き方をしたい」と上司に具体的に相談するなどしています。悩みを克服できているか分からないですが、だいぶ楽になったかなと思います。
Q.6 男性が多い職場ということで特別なことって?
大学時代から男性が多い環境だったので慣れているのか、あまりないです。もちろん性別関係なく、怒られることもありますよ。同僚と仕事を進めていく上で意識しているのは、話しかけにくそうな雰囲気を作らないこと。他部署の方を含め相手の立場になって考えることを心がけています。

Q.7 これからの目標、夢を教えて下さい。
まず、熱電発電システムを商品として世の中に出すこと。自分たちがゼロから作ったものを生かして、お客様の脱炭素化に貢献したい。
長期的な夢としては、ヤンマーが目指す社会と同じで、子どもが大きくなった時に、食とエネルギーに困らない社会になっていてほしい。そのために、これからもエネルギー分野で活躍できたらと思います。
今、家族で畑に野菜を作ってるんです。かぼちゃ、スナップえんどう、ジャガイモに、夏にはスイカも。もともと、都会は得意じゃなくて田舎が好き。子どもにもたくさんおいしい野菜を食べてもらって、大きくなってほしいです。
番外Q 「はばたけラボ」が問い掛けるテーマ、〝ヒトは「 」で人になる〞。あなたの考える「 」に入る言葉を教えてください。
何かの役に立ちたい、と思ったり、考えたりすること。 仕事でも、家庭でも、自分の原動力になっている根っこに、そういう気持ちがあると思います。
畑迫芳佳(はたさこ・よしか)/1989年生まれ。大分県出身。地元の高校卒業後、九州工業大学工学部(機械知能工学科)を経て同大学院工学府(同)修了。2014年、ヤンマーホールディングス入社。滋賀県米原市の中央研究所で、工場廃熱をCO2フリー電力に変換する熱電発電システムの実用化研究に従事。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。