筆者は自他共に認める漁師さんファンで、全国各地に〝推し漁師〟がいる。それもあって本誌で連載のご縁もいただけたのだが、世の中には自分などまだまだ…と背中を押してもらえる“スーパー推し活”に勤(いそ)しむ方々がいらっしゃる。中でも初夏に毎年思い出すのが、「ほやほや学会」の皆さまだ(ホヤの旬が初夏から8月頃のため)。
ほやほや学会とは、ホヤの認知度向上と消費拡大を目的とした団体。東日本大震災の影響で養殖現場が壊滅的な状態となり、さらには生産量の約8割を販売していた韓国から輸入制限をかけられてしまった危機をきっかけに、ホヤの魅力発信と販路開拓を推進しようと結成された。
代表は田山さんという女性で、女子高生が憧れの先輩について語る時のように、キラキラした瞳でホヤの魅力を教えてくれる。
田山さんいわく、ホヤは「めっちゃ良いヤツなのに、誤解されて嫌われてるクラスメイト」みたいなものだそう。確かにホヤは、においやクセがあると敬遠されることが多い。
「本当はすごく美味(おい)しいのに!私が誤解を解いてあげなくちゃという使命感で活動しています」と、力強く語ってくださった。
このご意見には、筆者も大賛成だ。それというのも、筆者もかつてはホヤのことを完全に誤解していた。独特のにおいやクセが“通(つう)”な酒席のおつまみというイメージ。しかし東北からこだわりのホヤを仕入れるお店でホヤのフルコースをいただき、その認識はガラリと変わった。
本当のホヤはにおいもクセもなく、代わりに「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味(うまみ)」という5大味覚を全てもった絶品食材なのだ。
お刺し身で食べる認識しかなかったが、煮ても焼いても揚げても美味しい。和食はもちろん、フレンチやアジアンにもぴったりだ。
実は殻やホヤ水(殻の中にある水分)も魅力的で、香辛野菜やバターと炒め、それをベースにスープをつくると、まるで濃厚なエビのビスク。甲殻類アレルギーの方でも安心して食べられる、素晴らしい逸品に変身する。
しかも鉄分はホウレン草(茹(ゆ)で)の6倍、亜鉛は鳥レバーの1・5倍、DHAはマグロと同等と美容や健康に嬉(うれ)しい栄養素もたっぷりというから驚きだ。
においやクセは鮮度落ちや、輸送の仕方が悪くてホヤにストレスがかかることが原因とのこと。私たちヒトがその魅力や注意点を理解すれば、ホヤは最高に愛される食材のひとつに輝くかもしれない。
ほやほや学会ではそんな魅力を体感してもらうべく、漁師さんを巻き込んだ生産地ツアーや都内でのイベントなど、素敵(すてき)な取り組みをされている。
日本には世間に知られていない魅力的な海産物が、きっとまだまだ存在している。そんな産物に出会えた時には、ぜひ皆さまも“推し活”に挑戦してみてほしい。それは世間にもあなた自身にも、心身の充足をきっともたらしてくれるから。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.25からの転載】