抗がん剤治療による脱毛や、手術の跡、体型の変化といった、がん治療に伴う「見た目の変化」(アピアランス)は、当事者の自尊感情や対人関係、復学後の学校生活などに大きな影響を及ぼす。しかし、外見の変化に伴う課題に対して支援する「アピアランスケア」は、日本ではまだ制度的に保障されているとは言い難く、学校現場でも支援が十分に整っていないという。
こうした現状を踏まえ、国立成育医療研究センター 小児がんセンター(東京)と、病気や障害のある子と家族への支援に取り組む一般社団法人チャーミングケア(大阪府池田市)が共同で、「小児がん等の治療による外見(アピアランス)の変化と、当事者の意識や生活への影響に関する全国アンケート調査」を、8月1日にスタートした。
アピアランスケアの必要性が医療現場や学校現場で適切に認識・提供されているかを可視化することが目的。日本在住の小児がん経験者本人(5歳以上)とその保護者を対象に、Webフォームによる無記名アンケート形式で行う。回答の所要時間は5~10分程度、調査期間は9月30日(火)までの予定。謝礼はない。回答者数600人を目標に、当事者と保護者のアンケート参加への協力を呼び掛けている。
主な設問内容は、「治療後の外見変化に対する本人/周囲の認識」「生活のしづらさや対人関係への影響」「学校や園での配慮・支援の有無」「ケア用品の利用実態(ウィッグ・帽子・肌着など)」など。調査結果は、国内外の学会や論文での発表や、厚生労働省・文部科学省など国の機関への提言資料として活用する予定。また、チャーミングケアのWebサイトでも、調査結果の一部を一般公開する予定。
今回の共同研究には、小児がんサバイバー当事者として、チャーミングケア広報の石嶋壮真さんが参画している。石嶋さんは現在、16歳。14歳の時に、「子どものアピアランスケアについて考える」をテーマに小児がんセンター長の松本公一医師にインタビューした内容もサイトで公開されている。「すべての小児がん患児の命を救うことはもちろん、治療に伴う副作用をいかに少なくするかが課題だ」と話す松本医師。子どものアピアランスケアについては、医療分野だけではなく、社会全体の問題として取り組まなければならないとしている。
