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余力あるうちの“円満廃業”増加 2025年の休廃業・解散は7万件台に到達する可能性も

 

 今年1~8月に発生した企業の休廃業・解散動向について帝国データバンク(東京)が実施した調査・分析によると、全国で休業・廃業、解散を行った企業は4万7078件で、前年同期(4万3071件)を9.3%上回り、3年連続で増加した。そのうち、総資産(保有資産の総額)が債務を上回る状態で休廃業した「資産超過型」の割合は64.1%を占め、2016年以降で最高となった。

  「休廃業・解散企業」は、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記などで解散を確認した企業を指す。その件数は増加ペースを早めており、年間では現行基準で集計を開始した2016年以降で最多だった前年を上回り、初めて年7万件台に到達する可能性があるという。

 2020年から2022年にかけて、企業の休廃業・解散件数は持続化給付金や雇用調整助成金など「給付」による手厚い資金繰り支援策を中心に功を奏し、コロナ禍の厳しい経営環境下でも抑制された水準で推移してきたものの、2023年以降はこれらの支援策が徐々に縮小され、電気代などエネルギー価格をはじめとした物価高、代表者の高齢化や後継者問題など四重・五重の経営課題が押し寄せたと分析されている。

 こうした厳しい事業環境のなかで、事業再生ガイドラインをはじめ、経営者の再挑戦や、引退後の生活基盤の保証などを目的とした「円満な廃業」を後押しする動きが進み、官民による廃業支援が充実してきた。そのため、自社の事業や業界全体の将来性が見通せず、現状のままではさらなる業績悪化が避けられないと判断した中小零細企業では、手元資金に余裕があるうちに会社を畳むことを決意した、余力ある「あきらめ廃業」が増加した可能性が指摘されている。

 一方、業種別にみると、その他(詳細不明を含む)を除く7業種すべてで前年から増加。最も件数が多い「建設業」(5938件)は、前年から6.5%増加し、年間では2016年以降で最多を更新する可能性がある。前年からの増加率が最も高いのは「サービス業」(5884件、前年比20.3%増)で、「製造業」(2289件、同20.2%増)とともに前年同期比で増加率が2割を超えた。「運輸・通信業」(494件、同10.5%増)でも、トラック輸送などを中心とした運輸業での増加が目立った。

 業種を細かく見ると、前年同期比で最も休廃業が増加したのは「生命保険代理店」(28件、154.5%増)で、前年比2.5倍の大幅増加。その背景について、複数の保険商品を比較する「保険ショップ」業態で多店舗展開を行う業者が台頭し、Web窓口と来店型ショップの双方で顧客を囲い込むビジネスモデルが台頭。契約手法も、ネット経由で直接契約を結ぶ「ダイレクト型」が浸透するなど販売チャネルが多様化し、対面を主軸とした営業を主体とする中小代理店では厳しい競争にさらされていることが挙げられた。