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夫の窮地を救いだした姫武者は妻だった 「夫婦の戦」を描く傑作『伊勢大名の関ヶ原』

 物事に動じない胆力のある女性は、いつの世でも輝いている。大名、富田信高の窮地を救った「姫武者」、信高の妻の活躍を描いた『伊勢大名の関ヶ原』(近衛龍春著、新潮社、税込み781円)が発売された。

 戦国武将富田信高が移封させられた伊勢国。そこはしたたかな商人や地侍が根を張る、一筋縄ではいかない土地。信高は穏やかな気性と慧(けい)眼で治世を進め、領民の声を聞き、新田開発に乗り出した。大乱前夜、城に迫りくる毛利・吉川の大軍3万に立ち向かう伊勢勢はわずか1700あまり。孤軍奮闘する信高の前に、馬上の「若武者」が現れる。のちの世にも語り継がれたその姫は信高の妻。なぎなたを手に、馬上から敵兵を切り伏せ、夫を救い出す。異色な大名の知られざる史実を描く快作だ。