
前編を読んでない方に説明すると・・・。人生はじめての「ぎっくり腰」と「声が出ない」状態の瀕死の私が、内視鏡・大腸検査を受けに行くという・・・愛と涙のヒューマンドラマ風のコラム後編です。
大腸検査当日。検査は15時から。朝の9時ごろから溺れるほどの下剤を飲まなければならない。言っておくが、もちろん声も出ないし、ぎっくり腰の激痛との闘いの中だ。
まず、粉末と水を混ぜて下剤を作るのだが、それも一苦労。水を入れた容器を振れないのだ。腰を曲げないように身体全体を上下させてなんとか混ぜ合わせる。どこかの部族の祈りの踊りみたいだ。そして下剤をゆっくり、水と交互に飲んでいき、もよおしてはトイレに行くを何度も繰り返す。最後は排せつ物が真水のようになるのだからすごい。
だが、ここで不幸がまたひとつ襲ってくる。腰が痛くてお尻が拭けないのだ。とはいえ、拭かないわけにはいかない。屈むのは激痛だが、横捻りはなんとかいける。便座から半分お尻をあげてなんとか拭く。しかし、そこに追い打ちの悲劇が。私の家のトイレは自動洗浄なのだ。半身のお尻を持ち上げると、もう済んだね、と言わんばかりに流してしまうのだ。待って! とカスカス声で言ってもトイレは待ってくれない。激痛の中、無残にも水は流れた。次は絶対に流させないぞと、半身お尻をチョンチョンと上げ下げして、まだ終わってないのをアピール。なんとかトイレを騙すことに成功。
そんなこんなでなんとか下剤を飲み切り、すり足で病院へ。進行は全て筆談。しかもぎっくり腰なので、下着すら脱げない。若く可愛らしい女性の看護師さんに脱がせていただく。これはほぼセクハラだなと申し訳なく思いながら、ゆっくりと台へ上がる。腰が楽な姿勢でいいですよと、膝を軽く抱えた胎児のような形。でも痛い。
『人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ』。情けなさすぎて、このチャップリンの言葉が脳裏に現れ、台の上でひとり爆笑してしまった。腰に響かないように抑えながら、カスカス声で笑っている中年胎児。看護師さんはさぞ気持ち悪かったに違いない。全身麻酔で起きたら全て終わっていた。全く問題のない綺麗な腸だとほめていただいた。ほんの1ミリだけチャップリンに近づいた気がした。腸だけ綺麗な満身創痍女の一日であった。 (完)

蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入り。24年7月、31日連続ネタおろし独演会「桃花三十一夜」を池袋演芸場で開催、大成功をおさめる。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.34からの転載】







