ローマやギリシアの物語に魅了され、現代ニッポンへのさまざまな提言に新しい視点をもらう塩野七生ファンは多い。文化勲章の受章が決まった塩野さんの長編歴史エッセイの文庫版、『ギリシア人の物語4 新しき力』(新潮社・東京、税込み1100円)が発売された。
単行本として刊行された『ギリシア人の物語Ⅲ 新しき力』を『3 都市国家ギリシアの終焉』(9月に既刊)と本書『4 新しき力』に分冊して文庫化したもの。古代ギリシアで勃興し、現代政治の礎ともなった民主政によって力を蓄えたアテネが、巨大帝国ペルシアと対峙(たいじ)。民主政とコインの裏表の関係にあるポピュリズムによってアテネで力を失うと、周縁国でマケドニアが台頭。本作はその王子として生まれ、ペルシアを制覇し、インドまで到達したアレクサンドロス大王の短くも激しい生涯を描いた作品。
著者の長編歴史エッセイとしては最後の作品であり、「最後だからもっとも若い男を書きたい」と選んだテーマを、執念で描き尽くした傑作歴史長編だ。