韓国慶北大学校のMoon Kyu Kwak教授およびその共同研究者らは、ヤモリの足裏を模倣した接着盤にソフトアクチュエータを組み合わせることで、接着時には強い接着能を保ちながら、容易に脱着できる搬送ソフトロボットの開発に成功した。研究成果は、10月25日に「Science and Technology of Advanced Materials」誌に掲載された。
多くの生物は粘着性の分泌液や爪などを使ってつかまったり、ひっついたりできる。一方、ヤモリのように、分子と分子の間に働く「ファンデルワールス力」という弱い力を使った乾燥接着という仕組みを使う動物もいる。ヤモリの足指には直径〜5 µm、長さが〜100 µmの剛毛が無数に生えており、足指が地面と触れる面積を最大化させつつ体重の負荷を分散させられる。さらに、剛毛の先端は細かく枝分かれした構造になっていて、ファンデルワールス力を最大化させることでくっつく力を増幅している。このヤモリの足裏にある階層的な微細構造を模倣した接着盤は乾燥状態で強い接着力を示すことから、ロボティクス分野への応用が期待される。ただし、強力な接着力を発現する一方で、引き剥がす際には強い力が必要となり、ガラス基板など壊れやすい材料の脱着には向かないといった問題があった。
そこで、先端に接着盤を備えた、ねじれながら収縮するチューブ状のソフトアクチュエータを開発。接着盤がひねり上げられることで簡単に接着面から剥がせるようになった。接着盤は、シリコーンゴムのエラストマーでできていて、先端には微細構造が施されている。また、ひねりを加えるためのソフトアクチュエータは長さ方向に対して斜めの溝が設けられたチューブ状の構造のため、減圧するとねじれながら収縮する。その際、ソフトアクチュエータ先端に固定した接着盤はひねりあげられる形となり、接着していたガラス板を傷つけることなく剥がすことができるのだ。
著者の一人、Sung Ho Lee教授は、「搬送ロボットは、モノを持ち上げ、任意の場所まで移動させ、配置する、という動作を繰り返し行っています。そこにヤモリの足裏を模倣した接着盤を用いたいというニーズは産業界に多くあります。今回の研究成果を産業分野に応用し、さらに進歩したモデルを開発するための研究を進めることで、産業界と学術界の架け橋になりたいと思っています」としている。