ここから想像できるのは、家康が「三河は一つの家」と語り、一向宗を信奉する貧しい百姓たちの姿も丁寧に描いた「どうする家康」が目指すのは、強い指導者ではなく、弱者に寄り添う指導者としての家康ではないかということだ。
そう考えると、さまざまなことがふに落ちてくる。家康自身が“か弱きプリンス”であること、服部半蔵(山田孝之)率いる忍者たちが、社会の底辺に生きる者たちであること…。いずれも“弱者”というキーワードで一つにつながってくる。
だが、これは、あくまでも筆者の想像に過ぎない。今回、一向宗の寺から強制的に年貢を取り立て、“か弱きプリンス”とは裏腹の権力を誇示してしまった家康は、この危機をいかに乗り越え、どんな指導者へと成長していくのか。三河一向一揆は、三方ヶ原の戦い、伊賀越えと並ぶ「家康の三大危機の一つ」ともいわれる。その運命を左右する次回が楽しみだ。
(井上健一)