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【キウイ、秘密を探る旅】<中> 「健康」「栄養」を研究、数値化も ゼスプリ、社会的責任を重視

 キウイフルーツが店頭に並ぶ季節になった。キウイは半分に切ってみると、緑や黄色などきれいな果肉があらわれ食欲をそそられるが、皮が茶色っぽいせいか果物の中ではあまり目立つ存在とは言えないかもしれない。
キウイフルーツの原産国は中国。1904年、ニュージーランド(NZ)の高校校長だったイザベル・フレイザー女史が中国から種をNZに持ち帰ったのが同国キウイの歴史の始まりだ。「チャイニーズ・グーズベリー」の名で育てられたが、茶色く毛羽立った見た目がNZの国鳥「キウイバード」に似ていたことから、名前を「キウイフルーツ」に変更。今では世界中で「キウイ」として売られている。

ニュージーランドの国鳥「キウイバード」

 ▼世界で流通する4割がNZ産

 ニュージーランドでは、気候や土地など自然環境がキウイ生産に適していたことから多くの生産農家が誕生。研究開発も進み、高品質なキウイフルーツを世界に輸出するまでに成長した。
NZ産キウイの海外販売を一括管理している「ゼスプリ インターナショナル」によると、キウイの国別生産量でトップは中国だが、ほとんどが国内で消費されるため、世界で取引されるキウイフルーツの約4割がNZ産だという。日本で見かけるキウイの多くに「Zespri(ゼスプリ)」のシールが貼ってあることからもわかるように、日本では約7割がNZ産(2020年時点)だという。

ゼスプリ インターナショナル本社=タウランガ

 ▼輸出を一元管理

「コロナ禍で健康意識が高まったせいか、日本での販売は好調だった」と話すグレン・アロウスミス氏

 ニュージーランド産キウイが世界に受け入れられている“秘密”を聞きにオークランド郊外のゼスプリ本社を訪ねた。応対してくれたグレン・アロウスミス氏は「約2800あるNZの現ゼスプリキウイ生産者と、過去の生産者がゼスプリの株主となり、一元的に管理・輸出をしているからだ」と“輸出の秘密”を説明する。こうした制度によって品質が保証され、世界50カ国以上で販売されるようになったという。

 日本へは1970年代からNZ産キウイが輸出され、日本人のキウイ認知度は高いが、アロウスミス氏は「もっとキウイが持つ効果・価値を消費者に知ってもらいたい」と強調する。ゼスプリがアピールするのは「健康」「栄養」だ。

サンゴールド(左)とグリーンキウイはそれぞれ特徴を持つ

 ▼グリーン、ゴールドそれぞれに健康効果

 健康と栄養については、同社コア商品イノベーション担当のポール・ブラッチフォード博士が教えてくれた。定番のグリーンは食物繊維の豊富さが最大の特徴。「消化不良を改善し、便秘を解消する効果」を指摘。最近の研究で、グリーンキウイを食べることで、腸の微生物相が強化され、脳の働き・気分の改善にもつながるのではと考えられているという。

 サンゴールドはビタミンCの含有量の多さが際立つ。肌の健康、免疫機能をサポートするとされ、ブラッチフォード氏は「1日2個のサンゴールドを食べた人が活力・幸福感を感じたという研究がある」と解説した。

ポール・ブラッチフォード氏は「キウイには栄養がぎっしり詰まっている」と健康と栄養について説明した

 ▼イチゴ、バナナより高い栄養価

 キウイフルーツは、ビタミンCをはじめ、食物繊維、カリウム、葉酸、ビタミンEといったさまざまな栄養素が凝縮されている果物だ。ゼスプリは身近な果物の「栄養素充足率」で説明している。「栄養素充足率」は、100グラムに含まれる17種類の栄養素(たんぱく質、食物繊維、カルシウム、鉄など)について、厚生労働省が日本人の食事摂取基準(2020年度版)に対してどのくらいの割合があるがを示した数値。

 ゼスプリの算出によると、「サンゴールドキウイ」(15.9)、「グリーンキウイ」(12.5)は、イチゴ(9.2)、バナナ(8.2)、柿(7.5)といった他の果物より群を抜いているという。

 ▼日本でも生産

 こうした「健康」「栄養」を世界市場にアピールする上で、課題となるのが南半球での生産だ。ニュージーランドの秋になる4月に収穫し、日本など北半球で販売する期間はグリーンが12月まで、ゴールドが10月、新品種のレッドは5月上旬までと限定的だ。

 空白期間を埋めるためにゼスプリは「北半球での生産支援」に力を入れている。北半球ではゼスプリの指導でキウイを生産しているのがイタリア、フランス、韓国、日本。日本では三重、愛媛、山口、福岡、佐賀、大分、宮崎、熊本の8県でサンゴールドなどを生産している。

三重県の浅井農園ではサンゴールドを栽培している=2022年8月、三重県玉城町(提供・浅井農園)

 ▼果物の消費の1%目標

 ニュージーランド産を中心にしながらキウイフルーツは各国で生産し、世界的に流通するようになり、市場は広がった。2021年時点でキウイフルーツの市場で最も大きいのは中国圏(中国、香港、台湾)、2位が日本だという。ただ、グレン・アロウスミス氏は「すべての果物の中でキウイフルーツは0.5%しか消費されていない」と不満そうで、当面1%にすることを目標に掲げる。

「生産者だけでなく、世界の人間の将来を考えている」と話すエディス・サイクス氏

 一方、チーフ・ピープル・オフィサーのエディス・サイクス氏は「ただキウイフルーツを市場に出すだけが目標ではない。環境を重視するなどサステナブル(持続可能性)が大事だ」と強調する。ゼスプリは社内に「持続可能性チーム」を組織し、キウイを通じて環境やコミュニティーへの貢献を図る取り組みを実践している。

 ▼「環境」も最重要

 具体的には、トレーサビリティー(生産流通履歴)のためにキウイ一つ一つに貼っているシール(ラベル)がゴミにならないようにどうするか、キウイを入れるプラスチック容器を品質が落ちないようにパッケージを変更するといったことを検討しているという。

日本のスーパーでも目立つところでキウイを販売していた=5月上旬、横浜市

 サイクス氏は、ゼスプリの「最重要目標」として①世界の人の健康②循環経済で環境を改善③栽培者・雇用・地域経済を支援―を挙げた上で「社会的責任を大切にしたい」と話した。キウイフルーツは「健康になりながら社会貢献できる果物」といえるかもしれない。

ゼスプリ本社のロビーにはキウイをデザインした自転車が置いてあった