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「どうする家康」第21回「長篠を救え!」鳥居強右衛門の活躍を導き出した瀬名の言葉【大河ドラマコラム】

 このときの瀬名の行動が、第19回でお万(松井玲奈)から告げられた「政もおなごがやればよいのです。そうすれば、男どもにはできぬことが、きっとできるはず。お方様のようなお方なら、きっと」という言葉に影響を受けていることは間違いないだろう。かつて領内で一向一揆が起きた際、瀬名が家康から「おなごが口を出すな」ととがめられた(第8回)ことを思うと、その役割は大きく変わった。

 だがその一方で瀬名は、この回の冒頭で武田側の忍びである千代(古川琴音)と密会。「私とあなたが手を結べば、何かができるんじゃないかしら? 徳川のためでも、武田のためでもなく、もっと大きなことが」と話し合う姿も描かれていた。

 この行動がどう出るのかは、史実を振り返ればおおよその想像がつくが、そこに込められた瀬名の思いは、いずれ家康の「天下泰平」という目標に受け継がれていく気がしないでもない。

 以前も指摘したが、本作で家康は女性たちにたびたび危機を救われてきた。勇ましい男たちが群雄割拠した戦国時代。乱世に終止符を打ち、天下泰平の世を導いた家康を女性たちが支えていたという視点は、本作の特徴の一つに思える。そういった意味では、女性たちの動きに注目すると、また新たな物語の魅力が見えてくるのではないだろうか。

(井上健一)

鳥居強右衛門役の岡崎体育 (C)NHK