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石崎ひゅーいさんの声に涙  【山崎あみ コラム音楽の森】

 シンガー・ソングライター、石崎ひゅーいさんとの出会いは衝撃でした。私は2歳でピアノを始めて以来、ずっと音楽に触れてきましたが、その中でも格別です。
 約2年前、私が出演している朝のラジオ番組にゲストで来てくださったのがご縁で、ライブを見に行かせていただきました。代表曲「花瓶の花」の歌い出し、「君が花瓶にくれた・・・」の始めの1音「き」の声を聴いただけで、私は鳥肌がバーッと立って、涙が出てきたんです。驚きの体験でした。すっと声を出しただけで、大きな会場の隅々まで、ひゅーいさんのエネルギーがびっしりと行き渡っていくようで。人間からこんなエネルギーが出るものなんだ! 隣にいた私のマネジャーも号泣していました。
 ひゅーいさんが書く歌詞は、ダイレクトな表現がとても魅力です。例えば「花瓶の花」では、「何年も何十年も何百年も・・・」探していた、君と生きていきたい―。
普段思っても、ちょっと恥ずかしくて言えないようなところを、ガシッと突いてくれる。「あ、こういう気持ちが自分にあったんだ」と気付かされます。しかも、さらっと、真顔で、うそがなく、マグマのような心の温かさで歌ってくれる。世界一リアリティーがあるアーティストなんじゃないかと思うくらいです。バックがバンド編成でも、オーケストラでも、アコースティックギター1本の弾き語りでも、ハマります。
 アーティストの一発撮りが見られるYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で、「さよならエレジー」(俳優・菅田将暉さんへの提供曲)をアコギ1本でセルフカバーした回も見応えがあります。途中でひゅーいさんはピックをなくしてしまうんですが、足元に落ちているのを見つけて静かに拾い上げ、再び歌い出す姿が話題になりました。ちょうどそこから、歌が盛り上がっていくんです。
 歌うときは何かに憑依(ひょうい)されたかのような集中力のひゅーいさんですが、普段は結構ふんわり。ラジオでのトークでは、どさくさに紛れて何度もうそをつくんです(笑)。私が「今朝はすっきり起きられましたか?」と聞くと「枕に顔をうずめて叫んできました」、別の話題では「グッズは全部、化学調味料で作ります」。どれも真顔で言うので、私が真に受けていると、「や、うそですけど」。ひょうひょうと冗談を言う人柄もすてきで、目が離せなくなるんです。
 ぜひライブに足を運んで、ひゅーいさんの世界を体感していただきたいです。ちなみに、一度聞いたら忘れないお名前は、本名だそうです。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 27掲載】

音楽の森山崎あみさん(タイトル部分用)

山崎あみ(やまざき・あみ)/1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時~8時55分)メインDJ。ポッドキャスト番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。金土曜更新。共同通信社制作)出演中。