大注目のアーティストをご紹介します。直近では7月に放送が始まった大人気テレビアニメ「呪術廻戦」第2期のオープニングテーマ「青のすみか」を手がけているシンガー・ソングライター、キタニタツヤさんです。昨年は「スカー」という曲で、こちらも大ヒットのアニメ「BLEACH 千年血戦篇」のオープニングを飾りました。 他に、「ジャニーズWEST」などアイドルへの楽曲提供や、ベーシストとしてAdoさん、まふまふさんら多彩なアーティストのサポートを務めるなど、ジャンルを超えて活躍しています。 東京大文学部在学中から既に、音声合成ソフト「ボーカロイド」を使って楽曲を制作・発表するボカロP「こんにちは谷田さん」名義で活動し、注目されていました。その後、ご自身で歌うスタイルになり、現在の「キタニタツヤ」名義でメジャーデビューしました。 私が特に大きな魅力だなと思うのが歌詞です。文学的で小説のようで、覚えておきたくなる表現があふれています。ミュージックビデオのコメント欄には、解釈を楽しむ「読解班」が登場するほどです。
例えば、「人間みたいね」という曲を聴いて歌詞を味わってみてください。主体である女性は、ひどく冷たい彼氏のことを「まるで人間みたいね」と言い表します。そして、彼から優しさが消え去った時の記憶や残酷な状況、複雑な感情を、美しい例えも交えてつづります。少しおぼろげだから、いろんな聴き方ができて、人によって解釈は異なります。何度も聴くと、新たな発見があります。
アニメの世界観を見事にすくい取った歌詞と疾走感のある曲がミックスした歌も聴き応えがありますし、「ちはる」「プラネテス」など、はかなさのある歌も大好きです。現実的でシニカルだけど温かさがあったり、冷酷な歌詞だけど歌声が優しくセクシーだったり。バランスが絶妙なんです。どの曲を聴いても、自分の価値観を広げてくれる感覚があります。
一度お会いしたことがあるのですが、背がとても高い。楽曲の印象からすると、クールな方なのかなと想像していましたが、お話しするとギャグセンスもすごく高くて、ギャップにやられてしまいます。ライブでのトークももちろん面白い。ご自身のSNS(交流サイト)での生配信では、ビーフシチューを作ってみたり、配信中にマネジャーさんからLINEで叱られたり(笑)。とにかく多面的で弱点がないキタニタツヤさんは、私の中では「令和の椎名林檎さん」です。ぜひ、その世界に触れてみてください。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.32より転載】
山崎あみ(やまざき・あみ)/1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時~8時55分)メインDJ。ポッドキャスト番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。金土曜更新。共同通信社制作)出演中。