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【週末映画コラム】全く予測がつかない展開を見せる『悪は存在しない』/“反面教師映画”『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

『悪は存在しない』(4月26日公開)

(C)2023 NEOPA / Fictive

 自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からもそう遠くないため移住者が増加し、緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧(大美賀均)は、娘の花(西川玲)と共に自然のサイクルに合わせたつつましい生活を送っていた。

 ある日、巧の家の近くでグランピング場の設営計画が持ち上がる。それは、コロナ禍のあおりで経営難に陥った芸能事務所が、政府からの補助金を得て計画したものだった。しかし、彼らが町の水源に汚水を流そうとしていることが分かったことから町内に動揺が広がり、巧たちの静かな生活にも波紋が生じる。

 濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(21)で音楽を担当した石橋英子と濱口監督による共同企画。石橋がライブパフォーマンスのための映像を濱口監督に依頼したことから、プロジェクトがスタート。その映像を制作する過程で、1本の長編映画としての本作が誕生し、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。

 冒頭の森や水を描写した長回し、住民と開発業者による環境問題のディスカッション、巧に感化されていく芸能事務所の高橋(小坂竜士)、行方不明になった花を捜すサスペンス、そして謎を含むラストシーンと、次々と変転し、全く予測がつかない展開を見せる中、自然と人間というテーマを表現する上では、長野県の富士見町や原村でのロケが大いに効果を発揮している。

 そんな本作は、劇映画とドキュメンタリーの境界線上にあり、予定調和を崩し、あえてストーリー性は度外視して、解釈を観客に委ねる形は刺激的だったが、同時に実験作、習作という印象も拭えなかった。

 濱口監督は、ラストシーンについて、「途中で終わったとしても、観客は想像してくれるのではないかという期待も込めて、あの終わり方にしている。今回は、思い切ってあるポイントで終わってみた。それで観客がどういうふうに反応するんだろうということも楽しみにはしている。この映画に限らず、常に観客には委ねられているとは思っている」と語っている。