未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、父親と娘の関係についてアドバイスします。
父親にはなついてくれない娘 どうしたらいい?
【質問】
中学2年の息子と小学6年の娘の父です。スポーツ好きの息子とは、小さいころから一緒に野球やサッカー、自転車旅行などをして頻繁に遊んでいました。そのせいか、現在も息子との関係は良好です。一方で、娘は母親にべったり。母親が娘に厳しいときには、自分が優しくしてあげたいのですが、それでもなついてくれず「ママがいい」といいます。娘とは、息子と比べるとそれほど一緒に遊んでこなかったので、「兄ばかりかわいがっている」と感じて嫉妬しているのかもしれません。娘との関係を改善するにはどうしたらよいでしょうか。ちなみに、最近、娘がバレーボールを始めたので、これをきっかけに仲良くなりたいと思っています。
▼心配には及びません 親は子どもから憧れられる生き方を目指しましょう
私が若い頃(およそ50年前)よく耳にした「子どもの教育は母親に任せてある」という父親の言葉はもう死語になりつつあるようですね。文面から推察すると父親は息子と、母親は娘と良好な状態にあるわけですから、全く心配には及びません。娘さんからすると、「お父さんとお兄ちゃんのようないい親子関係を、私はお母さんと作りたい」と思い、今、満足できる状況にあるわけです。思春期に入ると息子は母親と、娘は父親との距離を取り始めます。それは男の子が男性に、女の子が女性に変わりつつあるということですから、ごく自然な変化なのです。
この時期に大切なことは、いい夫婦仲を子どもたちに見せることです。「こんな父母になりたい」「こんな子育てをしたい」と思ってもらえる具体例を見せることです。夫婦間の尊敬・協力・慈愛を、言葉ではなく日常の生活ぶりで子どもたちに伝えましょう。
お母さんが娘さんに厳しくしたときに、なついてもらおうとしてお父さんが優しくしてあげることは慎みましょう。そうした時の「ママがいい」という娘さんの言葉がはっきりとした答えです。むしろお父さんは叱るお母さんの側に立ってサポートするほうがいいです。
娘さんがお母さんといい関係にあるのなら、最近始めたバレーボールをきっかけにお父さんの方から仲良くなろうとする必要もありません。ただし、お母さんが「お父さんに教えてもらったら」と言っていたり、娘さんが「お父さんに教えてほしい」と頼んできたりするのなら別です。
シュタイナー教育では7~14歳の時期を「権威と恭順の時代」といいます。つまり、人格形成の年頃になると「憧れを感じた人=尊敬できる実力者=権威者」のようになりたいと、自分なりの努力を始めるのです。担任や先輩やタレントやアスリートの中に「権威者」を見つけると、話し方・考え方・食事・生活習慣・持ち物までまねていきます。ということは、親は子どもをいかに育てるかではなく、親(大人)自身が、子どもから憧れてもらえるような素晴らしい生き方をすることが大切なのです。
文面から、息子さんが父親に、娘さんが母親に「憧れ」の気持ちを抱いていることが伝わってきます。どうぞ、子育てを楽しむ父母であり続けてください。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。