-私はこの映画を見ながら、「世にも奇妙な物語」や「イッセー尾形の一人芝居」、電話の声と音だけを頼りに、事件解決に挑む警官の一人芝居『THE GUILTY ギルティ』(18)などを思い浮かべたのですが、今回、監督の中で、意識したり、参考にした映画などはありましたか。
『THE GUILTY ギルティ』は見ていなかったのですが、打ち合わせの中で話題になって、見てみたら、音の使い方や電話でのやり取りなどが、すごく参考になりました。「電話の向こうに何がある」と想像力をかき立てられるものがありました。音の部分では、かなり影響を受けたと思います。あとは、タイプは違いますが、ラジオのDJとリスナーとのやり取りを描いた、オリバー・ストーン監督の『トーク・レディオ』(88)です。顔の見えない群衆の無責任な発言なども描かれていて、今回はそれが(SNSの)文字になっているというイメージでした。僕は、どちらかというと映画的な記憶だけでやってきているので、スタッフと話をしていても、「あの映画のあの感じ」みたいになるし、たとえで出てくるのは映画のタイトルばかりなので(笑)…。
最初に中島くんとお会いしたときにも、オリバー・ストーン監督の『Uターン』(97)の話をしました。あの映画の、ブラックユーモアや、いかがわしい連中が出てきて、誰も信用できなくなる、ちょっとカオスな部分などのイメージが、この映画と重なりました。今回、自分はこんなにオリバー・ストーンが好きだったんだと改めて気付きました(笑)。
-川村の元彼女役の奈緒さんは特殊な形での出演でしたね。
あの役は、もともと地方出身者にしたくて、台本では関西弁だったのですが、(福岡出身の)奈緒さんに決まったので、せっかくだから博多弁にしてもらおうと。それで奈緒さんと一緒にせりふを直していきました。彼女は、とてもせりふ回しのリズムがいいんです。聞いていてグッとくるんです。それを頼りに撮っていったところもあります。
-最後に、映画の見どころも含めて、観客に向けて一言お願いします。
中島裕翔という俳優を、徹底的に、とことんまで追い詰めた映画だと思うので、その汚れっぷりや、ぶっ壊れっぷりを楽しんでもらえたらと思います。99分間、飽きずに見られると思いますので、ぜひ、映画館の暗闇の中で見てほしいと思います。カップルで見ても、見た後で「あそこはああだったよね」とかで盛り上がれるかなと。特に、中島くんのファンに、「こんな中島くんが…」と驚愕(きょうがく)してもらいたいです。
(取材・文・写真/田中雄二)