-ラストシーンでは同じダンスを近藤が1人で踊りますが、今見ると、渡辺さんを追悼しているようにも見えて…。
本当ですよね。オマージュのようにも見えますし、鎮魂のレクイエムのようにも見えますし…。しかもあれはもともと台本になくて、監督が本番直前に思いついて「踊りましょう」と追加した部分だったんです。もちろん、そのときは渡辺さんもお元気でしたし。自分でも全く予想していなかったので、とても印象的なラストになりました。
-それは驚きです。まさに「映画の魔法」が発揮されたすてきなラストでした。では、本作を経験して、映画に対する思いに変化はありましたか。
人を引き込む映画の魅力を改めて感じました。こうやって映画は人をとりこにしていくし、映画を軸に人生を構築していく人もたくさんいる。そういうメディアなんだなと。僕自身、俳優としては『パッチギ!』(04)という映画がスタートだったので、映画に対して、かなり見上げるような気持ちもありますし。
-本作の舞台となる「銀平スカラ座」同様に、今、小さな映画館は苦しい状況に置かれています。その点についてはどんな思いがありますか。
一映画ファンとしては、ミニシアターが困窮している今の状況はつらいです。僕が力添えできることがあれば協力したいですし、そこにしかない魅力がもっと伝わるといいのかなと。この映画が、少しでもそういうことに役立ってくれたら本望です。それが一番のテーマですし、作品が最も昇華されることになると思いますから。
(取材・文・写真/井上健一)