-大事にしていた朝ドラの現場に向き合う気持ちに変化はありましたか。
全力で挑む気持ちは「ひよっこ」の頃から変わっていません。ただ、半年も一つの役を演じさせていただく機会はなかなかありません。だからこそ、「朝ドラだから、こうしなくちゃ」という固定観念に捉われず、自由に楽しむ余裕を持ちつつ、一度きりの綾という役を後悔のないように大事に演じていきたいと思っています。
-「造り酒屋の跡取り」という立場上、好きな植物の研究が思うようにできない万太郎や「女だから」という理由で家業の酒造りに携われない綾は、自由民権運動との出会いをきっかけに、自分の生き方を見つけていくようですね。そんな綾の生き方について、どんなことを感じていますか。
脚本家の長田(育恵)さんとお話ししたとき、「綾も万太郎も、自然に例えると太陽に向かって伸びる植物のようなイメージは同じだけど、綾は自然の中でいうと火や土、万太郎は流れる水のようなイメージ」とおっしゃっていたんです。それを踏まえた上で、自分ではどうすることもできない“しがらみ”や時代の流れの中で、起きてしまったことや自分の宿命に対して、どう落としどころを見つけるのか。その過程も含め、綾の生き方には、きちんと筋を通した上で、決してネガティブにならず、「どんなに大変でも、悲劇のヒロインにはならない」というポジティブで力強い人柄が表れているように思います。
-その辺は視聴者にとっても見どころになりそうですね。
そうですね。いつの時代も、自分を縛るしがらみみたいなものはあると思うんです。植物学の道を志す万太郎と同じように、綾にも1人の人間としての成長につながり、酒造りに対する思いをより強くするような出来事があります。そこはぜひご覧いただきたいエピソードですし、そういうものを乗り越えていく綾の姿を通して、前に向かって進んでいくエネルギーを皆さんに届けられたら…と思っています。
(取材・文/井上健一)