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「家族には、一線を超えてもそれを受け止めて、翌日にはケロッとしているという弾力みたいなものがある」橋口亮輔監督、江口のりこ『お母さんが一緒』【インタビュー】

-それはなぜですか。

 タカヒロは今時のキャスティングだとイケメンばっかりなんです。「EXILEでどうですか」って写真まで見せられました(笑)。でも、タカヒロはちょっと天然で、救いになるような役です。ちゃんと生きた男の人にしたかったんです。だから天然でぼーっとしているように見えるけど、実はちゃんと常識的なことが分かっていて、物の道理も分かっている。そういうところも納得させられる人じゃないと駄目なんです。だから演じる人の人柄が出ればと思いました。

 YouTubeで見た時に、青山くんはまさにこのポスターの笑顔そのままに、屈託なく笑っていました。僕はそれを見て「こいつ、いいやつだな」と。真っすぐな屈託のない感じが本当にいいやつだと思ったので出演をお願いしました。

江口 三姉妹だけでずっと同じ部屋でやっていて大変でした。だから、青山さんが来てくれるだけで、何か晴れたみたいな感じがしました。

-江口さん、今回演じる上で気を付けたことや心掛けたことはありましたか。

江口 まず、橋口監督の映画に出るというのはすごく怖いことなんです。それは私だけじゃなくて、内田さんも古川さんもそうだったと思います。だから、リハーサルの時から一生懸命自分に取り入れるものを探して、監督から「こんな人間がいたんだよ」みたいないろんなお話を聞いた時に、その人間を私たちはこれからやろうとしているんだ、大変なことだという意識が湧きました。

 でも、いざ現場に入ってやるとなると、何かを気を付けるとか、もうそういうことではなく、その日に撮る量もたくさんあるし、本当にただ一生懸命にやらなければという感じになります。だから、リハーサルで感じて、心の中にぎゅっと入り込んだものがすごく財産になっていました。

 監督は具体的に「こんなふうにして」とかは言わないんです。だから、本当にリハーサルが役立ったといいますか、現場に入ったら、あとはもう集中してやるだけみたいな感じで、本当に3人で頑張りました。3人が同じ方向を向いていました。それはどこかというと監督の方向です。

-怖いというのは、具体的には監督の何が怖いんですか。

江口 監督が作る映画って面白いでしょう。それってやっぱり、厳しい目で物事や人間を見ているということだと思うんです。私たちは、ジャッジされているって思ってしまうから、それは俳優にとってすごく怖いことです。そういう怖さだと思います。

-弥生が眼鏡の跡が付かないように鼻根にティッシュを付けていたり、弥生は一重まぶたのコンプレックスがあるから、江口さんがずっとつけまつげを付けていたり…。ディテールが面白かったです。ああいうのは、もともとの舞台からあった設定なのですか。それとも監督が考えたものですか。

橋口 つけまつげはオリジナルの舞台でもそうだったので、メークの打ち合わせをして、江口さんに一番合うのでやりました。鼻根にティッシュを付けているところは、実際にそういう女性を見て、この人はこんなふうにして、日常の仕事をしているんだろうなと思ったら、ちょっと寂しい気持ちになったというようなことをリハーサルの時に話しました。それが僕が弥生をつかめたと思った瞬間だったんです。

 その女性を思い浮かべた時に、「これを映画の冒頭で弥生がやったらどうかと思うんだけど」と言ったら、江口さんが「やらせてください。やりたいです」って。主演女優が最初だけ鼻に白い物を付けていたら、どうかとも思いましたが、じゃあちょっとやってみようかと。あれは、何やってるんだろうこの人って思いますよね。妙に気になりますもんね。

(取材・文・写真/田中雄二)

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