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初共演の堤真一&瀬戸康史が挑む二人舞台 「答えが出ない」問題を描く「A Number―数」【インタビュー】

 堤真一と瀬戸康史が初共演で二人芝居に挑む。2人が出演するのは、Bunkamura Production 2024/DISCOVER WORLD THEATRE vol.14「A Number―数」だ。本作は、現代イギリス演劇を代表する作家の1人、キャリル・チャーチルによる近未来を舞台とした作品。今回の公演では、大東駿介と浅野和之らによる「What If If Only―もしも もしせめて」とともに2作品連続上演される。秘密を抱え葛藤する父を演じる堤と、クローンを含む3人の息子を演じる瀬戸に公演への思いを聞いた。

瀬戸康史(左/ヘアメーク:小林純子/スタイリスト:田村和之)と堤真一(ヘアメーク:奥山信次(B.SUN)/スタイリスト:中川原寛(CaNN)

-人間のクローンを作ることが可能となった近未来を舞台に、クローンであることを知った息子とその父親の会話劇である本作。お二人は最初に脚本を読んだときはどのような感触がありましたか。

 きっとお客さんは何の会話をしているのか、全く分からないまま進んでいって、徐々に分かっていく、そんな物語だと思います。(演出の)ジョナサン・マンビィは、何かを分からせようとせず、分からないままでもいいと思うような演出家の方なので、最後まで訳が分からないまま終わってしまうという人もいるんじゃないかな。イギリスのリアリズム演劇だとそうした作品も多いですよね。分からせようとする芝居が多い一方で、ジョナサンはそういうことを求めていない。ですので、ご覧になった方は「最終的に何が言いたかったんだろう」と思われる可能性も高いなと。ただ、もう一作の「What If If Only―もしも もしせめて」と一つになったときに、どういうものが生まれてくるのか。その相乗効果は必ずあると思います。

-1回、読んだだけでは理解しきれない台本ですよね。

 正直、意味が分からないです(笑)。人の命にどう関わるのか。技術が発達しても、人間はどの程度、命の問題に介入していいのか。そうしたことが描かれているのだとは思いますが、難しい作品ですね。技術の進化は犯罪にも使えるものですし、人間の良心にかかっているところもある。答えが出ない問題なので、僕にも分からないです。見てくださった方がどう思うのかだと思います。

-瀬戸さんは、台本を読んでいかがでしたか。

瀬戸 読む前にプロットを読んでいたので、父と子の関係性やクローンを使った悲しい物語なのかなと思っていたのですが、読み終わったときは希望が持てる作品だと感じました。最後に登場する、僕が演じるマイケルは、前向きでポジティブな生き方をしている人なので、読了感が良かったですね。僕も日々、ポジティブに生きたいと思っているので、共感できました。

-それぞれの役を現時点ではどのようにとらえていますか。

 息子に対する思い入れは間違いなくあると思いますが、どこまでが本当なのかが分からない人物だと感じました。もし、全て本気だったとしたら、天然な愚か者な親父ですし、そうでないならまた感触は変わってきます。自分の子どものクローンを作るという発想は僕にはありません。命は肉体を複製したところで魂が違う。なので、僕はこの父のような判断は絶対にしないと思います。僕は特別な価値観を持っているわけでもなく、優れた能力があるわけでもなく、普通の感覚の人間です。なので、(父役は)理解できないんだと思います。実際に、彼が何を考えているのか。その辺りは、これからの稽古でジョナサンと話し合いながら作り上げていきたいとは思っています。

瀬戸 僕はその作られたクローン側ですが、もし、本当に自分の「クローンがいました」と言われても、「へえ」くらいの思いしかないと思います(笑)。先ほど、堤さんもおっしゃっていましたが、まるで違うものなので。いつか合体するわけでもないし、その人が送ってきた人生が思い起こせるわけでもない。全く別の人生を歩んでいる人で、たまたま遺伝子が一緒なだけ。今回、三役演じさせていただきますが、今のところは違う人物を演じるという気持ちでいます。