エンタメ

風間俊介「僕は自分の黒いところも好き」 タブーに挑んだ衝撃作「モンスター」で見せる光と闇【インタビュー】

-本作は、ディスコミュニケーションを描いた作品でもありますが、風間さんが人とコミュニケーションを取る上で大切にされているのはどのようなことですか。

 「決めないこと」ですね。例えば、ここで「僕のコミュニケーションはこれです」と言ってしまったら、その時点で霧のように消えていってしまうように思います。僕は、人によってコミュニケーションの仕方を変えますし、「その時々で違う」というのが僕の矜持(きょうじ)です。「あの人は誰に対しても態度を変えない」というのが美徳とされている世の中ですが、僕はそれが分からなくて。人によって態度を変えないとコミュニケーションは成り立たないのではないかと思います。

-現場や稽古場では積極的に話しかけるタイプですか。

 人と話すことはすごく好きなので、話しかけると思います。ただ、僕がたくさん話すのは最初のコミュニケーションのときで、仲良くなって安心すると、それほど多く話さないかもしれません。そんな自己分析をしています。

-劇中に登場するダリルは14歳の少年ですが、風間さんが14歳のときはどんな少年でしたか。

 仕事を始めたくらいの年齢ですね。すごく斜に構えていました(笑)。どこか大人の社会を垣間見るのが好きな少年だったように思います。職員室もすごく好きでした。先生方も家に帰れば教師ではなくなるというのが面白いなと。僕の目の前では、教師という役柄を持っているけれども、きっとこの人も別の場所に行ったら全然違う顔を見せるんだろうなと、そんな目で先生のことを見てしまう少年でした。

-ダリルとは全く違った少年時代だったのですね。

 どうなんでしょうか。言葉遊びになってしまいますが、“違う”ということではなく、“ある種同じである種違う”という言い方が正しいのかなと思います。

-最後に、この作品を見る人に、作品を通してどんなことを伝えたいですか。

 お客さまが感じることは千差万別だと思いますが、「すごく小さな幸せを大事にしたい」という感想を持つ方がいらっしゃればいいなと思います。例えば、花がきれいだったとか。今、言いながら、僕自身もあまりそういうことを敏感に感じられていないと思いましたが、そうした小さな幸せをかき集めるしかないと思います。僕は最初にこの台本を読んで、このお芝居を見たらどんなことを感じるのか想像した時、「自分の中にモンスターがいるのは仕方ない。でも、それをモンスター化させるのか、ペット的な存在でいてくれるのかという分かれ道は、光が当たる要素を蓄えられるかどうかだと思う」と感じました。光と闇のバランスが崩れていかないようにするためにも、“光のストック”をしておきたいし、しないといけない。光は自分で意志を持ってストックしないとたまらないものなので、意識してためたい。僕はそうした感想を持ちましたが、皆さまにそう思っていただきたいということではないので、皆さまがどんな感想を持たれるのか楽しみにしています。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「モンスター」は、12月18日~28日に都内・新国立劇場 小劇場ほか、大阪、水戸、福岡で上演。

舞台「モンスター」