全国の市町村の約26%は書店ゼロ 15年で約40%減少した本屋さんを元気にするには?

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 本屋のない市町村が全国で26.2%に上ることが出版文化振興財団(JPIC)の調査で明らかになった。全国1741市区町村のうちの456市町村は書店ゼロ(2022年9月現在)だ。

 全自治体に占める書店ゼロの割合は、沖縄県(56.1%)、長野県(51.9%)、奈良県(51.3%)、福島県(47.5%)、熊本県(44.4%)、高知県(44.1%)、北海道(42.5%)と続いた。

 書店がゼロか1店舗の自治体の割合は、高い順に長野県(71.4%)、北海道(70.9%)、高知県(70.6%)、宮崎県(65.4%)、和歌山県(63.3%)、鳥取県(63.2%)、福島県(61.0%)。

 少子高齢化が進む中、紙の書籍や雑誌が販売不振で、インターネットでの書籍購入の広がりなどにより、街の本屋は廃業が相次いでいる。書店の数は15年で約40%減少した。

 一方、書店がない自治体がゼロなのは広島県と香川県だった。次いで無書店率が低かったのは、愛知県(3.7%)、兵庫県(4.9%)、石川県(5.3%)、埼玉県(7.9%)。

 書店がゼロか1店舗の自治体の割合が低いのは、石川県(10.5%)、富山県(13.3%)、兵庫県(14.6%)、東京都(19.4%)、香川県(23.5%)だった。

 およそ150人の国会議員が参加する「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」がこのほど発表した中間とりまとめは、「街の本屋は単に本を販売する場所ではない。書架に並ぶ『未知の本との出会い』が、来訪者の視野を広げ、潜在的な関心を呼び起こしている。来訪者が一定数の現物を直接確認できる『街の本屋』は、ネット書店よりも、こうした『未知の本との出会い』の可能性をより大きく秘めている」とした。

 同議員連盟は、具体的な施策の要望として、読書推進を目的として書籍購入や読書活動への参加を促進するクーポン券の配布と、出版物への消費税・軽減税率適用を挙げた。来年春ごろをめどに、最終報告書をまとめる予定だ。

 はたして、書店の減少問題はもはや自由主義経済に任せておけないほどにまで、深刻なレベルなのだろうか。「欧米先進国は政府レベルで書店を守っているから日本も」というような声も上がっているが、星野渉・文化通信社専務取締役は2018年12月9日付「東洋経済ONLINE」で、日本の出版業界の構造こそが問題だと指摘していた。

 星野氏によると、日本の本屋は雑誌を多く販売してきたため、特に中小規模の書店は、雑誌販売で利益を上げる構造になっており、これは、出版の流通を担う「取次」各社が、全国の書店やコンビニなどへの配送網を作り、書籍と雑誌を流通させることで成立してきたという。雑誌の売り上げが大きかった時にはよかったが、出版物の販売量が減少し、雑誌の市場も急激に縮小すると、中小書店と総合取次の経営を直撃した。

 このままの収益構造を維持したままでは、書籍をベースにした取次や書店は存在しえなくなると星野氏は指摘。さらに、「日本の書籍返品率が高いのは、多くの出版物を書店の注文に基づかずに送る『配本制度』があるからで、これを抜本的に見直す必要がある」としている。